第10章 砂と予兆
「……?」
そんな彼女を見て違和感を覚えたテゾーロは『名前』とクロコダイルを交互に見た。
『名前』がそこらの海賊に会った時はもちろん彼女が天竜人の奴隷だった時もそしてドフラミンゴにも見せなかった恐れの顔。
今でも彼女は天竜人を見た時できる限り距離を取るし対応を避けるが、それは彼女が逃げた奴隷であることがバレるのを避けるためで天竜人自体に恐れはないようにみえる。
両者間に何かがあったのだろうかとテゾーロは懐疑的な目で見ていた。
「お前が囚人ごときで怖気付くタマには見えねェがな」
「………」
『名前』は何も返さず沈黙を通した。
その反応も気になるが今彼らの裏を疑っても仕方がない。その考えを一度頭の隅に置いた。彼にとっては今それを探るよりも『名前』のために用意したこの部屋もとい、現在権力を持たない部外者クロコダイルがこの場にいることが面白くないのである。テゾーロは一呼吸おいて彼に目を向けた。
「この場にいる理由はわかったが……だからといって匿うほど私はお人好しじゃない」
「クク、そう言うな旧友のよしみだろう?」
「ハッ!今のお前に用意する部屋などない───」
「……いえ、私たちは用意しなければいけませんよテゾーロ様」
「!」
突然2人の問答を『名前』が ぶった切った
勝手に許す『名前』に対してテゾーロは眉間にシワを寄せる。クロコダイルも彼女がそれを許すとは思わなかったため ほう、と笑みを浮かべた。
「──どういうつもりだ」
テゾーロは『名前』に対し苛立ち、ほぼ責めるような形で問いただす。流石に彼の気迫で痺れるような感覚が走るがここで引き下がる訳にはいかない。そのままクロコダイルを外に逃がしインペルダウンに戻さないなんてことになってはいけないからだ。
「確かに彼はこの船の部外者、取引するだけの相当の地位があった昔ならまだしも、今は違うことは事実です。」
「ハハ……そこまでわかっていて何故お前が許すと言えて、私に指図できる?」
『名前』は真っ直ぐとテゾーロをみて、先程までの姿とは一変して真剣に答えた。
「───脱獄囚の彼がこのグラン・テゾーロにいると知られては、この船にとって不利益だからですよ」
「「!」」
「先日、ドフラミンゴ様の一件があったでしょう」