第10章 砂と予兆
貴方に用があると正直に伝えるとまた違う誤解を生みそうで言いにくい、どうしようかと悩んでいると彼は歩を止めた
「……今度はお前に付き合う、何処に行きたい」
「!それは……私はまだ少し仕事が残ってる。けど貴方はお客様だから連れていくわけには」
「それなら気にするな」
「え?」
クク、と彼は笑うといつの間にか店から出る時に咥えていたのであろう葉巻の灰を溝に落とした。
「昔テゾーロとは縁があってな、顔がきくはずだ」
「……確かに、それなら通してくれそう」
テゾーロとの関わりは彼の経歴を考えると何ら不思議ではない。
それに今なら彼は有無を言わさず通してもらえるだろう……それに、私は丁度それについて聞きたいのだから。
それを考えると彼はあの場で、テゾーロを混じえてなら話してくれるかもしれない。
そしてクロコダイルと『名前』は意思疎通ができたのを表すかのように同じ方向を見上げた。
___彼らの目線の先にある黄金のホテルはそんな2人を照らしている。
____
時は過ぎあれから数時間後──
「入るぞ──!?、クロコダイル……!?!」
「あー……久々だな、テゾーロ」
「お疲れ様です」
『名前』の部屋の扉が勢いよく開きテゾーロが現れた。彼はすごく焦っているようだが、当然のように部屋にいるクロコダイルは葉巻を嗜み、『名前』はそれを気にせずいつも通り仕事にとりかかっている。その異様な様子に更に困惑するテゾーロと横にいる部下。
「これは……?」
「テ、テゾーロ様、私はただ『名前』さんが男に脅されて自室に閉じ込められていると報告を受けて──ただ、相手がクロコダイルだとは!」
横の部下の答えに思わずクロコダイルは大笑いし、『名前』は大きなため息をついた
「___クハハハハ!俺がこの女を脅す理由がねェよ」
「やっぱり変に大事になってる……もうどうとでもなれ……」
二人の様子に全く意味がわからない、となったテゾーロはとりあえず部下に下がれと命令し、呼吸を整え落ち着きを取り戻した
「『名前』説明しろ、何故お前の部屋にコイツがいる?」
『名前』はもう一度大きくため息をついてキーボードから手を離す。くるりと椅子に座ったまま振り返って彼を見据え立ち上がった。
「実は……__」