第10章 砂と予兆
「……」
「呼び止めてから理由考えないでくださいよ!?」
クロコダイルは彼女の肩を掴んだまま軽く俯き悩ましそうにしている。こいつ本当なんなんだよ。
とはいえ今は言えない何かがあるなら私も無視はできない。何せ相手が相手だし彼には私も聞きたいことがある。
「……はぁ、理由は後で聞かせてくださいね」
「!」
「お腹がすきません?どこかでご飯にしましょう。そうですね──"ワニ肉"とかどうです?」
「……連れて行け」
『名前』は口角が上がり半ば嬉しそうな彼を横目に、行く店に向かいつつ電話をいれた。
____
「こちら、ワニ肉のグリルとステーキ……そして唐揚げに」
「いい、下がれ」
「あっはい、失礼致しました!」
ワニ肉専門店とはいえあまりにも似たような料理ばかりかつ大量に頼んだからか、スタッフか慌ただしそうにそれらをテーブルに並べていく。
クロコダイルは早く食べたいのかスタッフの説明を飛ばして早く並べるよう急かした。これ全部彼が頼んだのに。
「あまりスタッフをいじめないでください」
「クク……いいだろ、長話は聞きたくねェ」
「……」
もうやだこいつ、と言いたげな『名前』の目を無視して彼は料理に手をつけた。
それはさておき、この店は前に一度来たことがあるが結構評判も良い。きっと彼の口にきっと合うだろう。
……あ、顔に出さないよう頑張ってるんだろうけれど凄い美味しそうに食べてる、大丈夫そうだ。念の為口頭でも聞いておくが。
「どうです?」
「ん……悪くねェ」
顔に現れていたのに気づいたのかスっといつもの強面顔にもどり、こちらを睨む。いやなんで睨むんだ、私は何もしていないだろう。
「──それは何より。ところで単刀直入に聞きますけれどなぜ私を引き止めるんです?」
「!」
彼は少し目を見張りつつ唐揚げを一つ口に放り込む。何と返そうか少し考えた後、それを飲み込んでから彼は口を開いた。
「めんどくせェヤツにお前に会ってみろと言われてな」
「私に?どなたがですか」
「……フラミンゴ野郎って言えばわかるだろ」
「(──ドフラミンゴ!)」
先程同様、脳裏に『青年』の言っていた"面倒事の元凶"がよぎる。彼の情報網の広さ……それでクロコダイルにまで私の名前が届くなんてことになるとは。
「本当に彼が?」
「あァ、そう言われた」