第10章 砂と予兆
「めんどくせェ……少しツラ貸せ」
「えっ」
無意識に無礼を働いてしまったのかと焦り、顔を強ばらせると呼び止めたはずのクロコダイルが言葉を詰まらせる。
「クソ……まァいい。案内しろ、行きてェところがある……___」
 ̄ ̄ ̄ ̄
「「……またロイヤルストレートフラッシュ!?」」
「フフ、随分と運がいいみたいだなァ」
クロコダイルが私を呼び止め案内して欲しいと言った理由はポーカーをしたいからだった。にしては面倒くさそうではあったが。
とはいえ現在の彼は負けても少額でこの通り勝ち続けるほど強いし案外楽しそうだ。後ろで見ていた私は席に座る彼のもとへ近づき話しかけた。
「賭け事、得意なんですね」
「……今だけだろうがな」
「いつもは違うんです?」
そういうと彼は適当に手札を交換してフルハウスを作ってみせた、がドロップして降りる
「多分だが……俺はここにいるべきじゃねェ」
「?」
真意が不明だと首を傾げると、ポーカー参加者の一人がフォアカードをだしてその場の勝ち星を得ていた。
周囲の参加者が彼が降りていたことに対して面白くないのか舌打ちをする。
そんな他者を無視して彼はゲームを続け、またも適当に手札を交換した後今度はレイズした。
「俺がこうやって勝てているのも本当はありえねェからな」
「勝つことが……ありえない?」
そういいつつ彼はその場で今度はスリーカードを出し、当然のように勝ちを得ていた。
「こいつスリーカードにレイズしたのかよ!?」
「それでこの場にだせるなんて……」
ここまで強い手札で勝っていた彼がスリーカードを揃えレイズをするなら周りも構えるだろう。良い騙し討ちになる。
ただ当の本人はつまらなそうにトランプを机上に置き、やめる と一言告げるとその場を去った。
その後を『名前』は慌てて追いかける。
「もういいんですか」
「……別にそこまで好きじゃねェからな」
「ポーカーやりたくて仕方がないから案内してって言ったのに!?」
「好きとはいってねェだろ」
案内させておいてなんて言いようだと少し苛立ちつつ、彼の後をついていった
が
いや、私はもう彼についていく必要ないのか。と『名前』は気づき歩を止めて来た道を戻ろうとした。
「どこへいく?」
それをしっかりと私の肩を掴む彼の右手に止められたわけだが。
「!?」