第9章 決意
___なんで来て早々説教されなきゃいけないんだ!
と、思ったがまあ今日のこともある。それに言い返せる立場じゃないなとその苛立ちを眉間に皺を寄せる程度で済ませる
「お前のせいで全てが滅茶苦茶だ……」
「……全て、とは?」
「私が、という話だ。……私でもわけがわからない。」
今の彼が言う言葉は話の中核を避けていて真意を察しにくい。それに、いつもの彼と根底にある彼の設定に繋がらない内容だ。
ただ涙脆くなっている様子から今の彼が相当弱っていることは確かだろう。
仕方がない人だな、と大きなため息をつき『名前』は再度彼の背中を撫でた
「はぁ……今回の騒ぎはすみません、あんなに大事になると思ってなくって……貴方がそういう人だと思っていなかったから」
「……私も、ああなるつもりじゃなかった」
「はい?」
「お前がどこへ行こうと、どうでもよかった、のに。」
テゾーロは落ち着いたのか私を抱きしめるのを辞めて、『名前』にちゃんと向き合った。泣いていたのもあって彼の目は充血している。それに酔ったのもあって顔が赤い、
私はそんな彼の目をまっすぐ見る。
「……お前のせいにしたくなるほど、たまに私は私が、わからなくなる。……そんな自分が、嫌になる。」
彼自体はとても強いのに、ああ目の前の本人の姿はあまりにも弱く映る。それが今の私の主人……
___そして、私の"大切な人達"の大きな敵になる人。
私のこの世界での願いは辛い時にその生き様をみせて元気づけてくれた、麦わらの一味の助けになること。
いずれ私は彼の敵になってしまうのだろうとわかっているのに、命の恩人だということを無視しても私は……とても今の彼をほうってはおけない。なんて私は中途半端なやつだろうか。
___私も私がわからなくなって、嫌になる。
「同情をしたいわけじゃないですが……私も私がわかりません、今まさに」
「……」
テゾーロは黙って私の次の言葉を待ってくれた
「たまに自分を見直すとそんな私が嫌になる、貴方のように。でもだとすると変ですよね」
「?」
「貴方をみても、むしろ……嫌いじゃないって思えるんです」
「!」
テゾーロは彼女の言葉に動揺し心臓がやけに痛くなった。ああまた、自分自身に訳が分からなくなっている。どうしてこうも彼女にかき乱されてしまうのだろう。