第9章 決意
「そしてなかなか見つからず落ち着かないご様子のテゾーロ様は貴方の部屋に行き、時間のある限り業務を進めていたのですよ」
「……こんなにたくさん、彼が」
タナカさんが持ってきてくれた一束のそれらから作業机に目を移し近づく。そこにも置いた記憶のない束の書類ほとんどが同じく完成された、元々私が請け負っていた作業だった。
そのあまりの多さに……罪悪感が生まれる。
「私が、戻ってこなかったからですか?」
「?」
視界の端にタナカさんが首を傾げたのを見て彼に向き直った。
「私が、あまりにも戻る気配がなかったから……穴埋めの為にこんなにされていたのかと思って」
「!あぁそんなこと」
するるるる とまた彼は彼らしく、今度は可笑しそうに笑った
「するるるる!そんな、ありえません!テゾーロ様は"そういう方"ではないです」
「(非道さとか彼がどういう人かは把握しているのか……)じ、じゃあなんでこんなこと」
「……貴方のためかと」
「!」
優しそうな顔のままタナカさんはニッコリと微笑んだ
「これは憶測ですが、テゾーロ様は貴方が戻られた際にゆっくり休めるように……彼なりに貴方の身を案じてこうされたんです。
___いつもは貴方が無理をしないよう、いつも部屋に来られて、貴方の作業を手伝われているでしょう?」
「そ、それはそう……ですけれど」
いざそうだと言われてしまうと少し恥ずかしくなってしまう。たしかに私は正直認めたくなかったが、彼はいつも部屋に来ては私の仕事の量を見かねて手伝ってくれた。
それに……徹夜で作業しようとすると本気で怒ってきたし、無理やりにでも私を寝かせようともした。足を金にしてきたこともある。いや、だからといって認めたくないけれど。
「するる、認めたくないですか?」
「……」
図星を刺された私をクスクス笑いつつ、私の心情を察してタナカさんは話を続けてくれた
「するるるる……テゾーロ様はこれまでのお気に入りと呼ばれる方には人一倍優しくされます。ですが、ここまで自身の時間を割いてまで尽くす方はいません。私の知る限りでですがね。」
彼の言葉に少しずつ私のプライドが追い詰められていく。恥ずかしくてつい思ってもいないことを言ってしまった。
「……情けをかけられている、というわけではなく?」
「するる、そんな方に見えますか?」
「……いえ」