第9章 決意
喉から手が出るほど……あぁ、たしかに例えばカリーナのように財宝目当てだったり、あの立場を持つ男の女としての座はたしかに価値あるものだろう。
ただ、私の場合元々一つの物語のキャラクターとしてみていた以上、自分が愛されるというのを想像しにくい。
___いや何より
「私には(人を簡単に金像にしたり、悪趣味なことばかりしてくる人の心がまるでない奴の大バカ野郎のモノになるなんて、私の人生が)勿体ないですよ!」
「そ、そうですか、するる……謙遜ではなさそう……ですね」
心に秘めた思いが全部顔に出つつ『名前』は謙遜する体で話した。タナカさんはその表情から察して苦笑いした。
いや、だが本当に勿体ないとも思っている。
彼の、テゾーロの横に立つのはステラが唯一だとも思えるし、それこそ私じゃなくてテゾーロガールズのようなここにずっといる彼女らがよっぽど相応しい。
「勿体ないですよ、仮に私が立つとしたら……彼の権威に響きます」
「……そうですかねぇ」
タナカさんはくるりと後ろを向き私の作業机に向かう、一束の書類を持ち、空の瓶とグラスの置かれたテーブル横に置いた
「私はこの船の幹部であり、テゾーロ様にお仕えしてきました。あぁそれだけの身ではありますが___」
「?」
そう言いつつ手招きをする彼に近づき、彼の持ってきた束に目を通す。よくよく見るとそれはただの資料ではなく、次の会談についての配布資料や纏め冊子など……私がやるはずだった業務の完成品だった。
「これ……もしかしてこの書類全部?!」
「するるる……さっき貴方がお出かけになられていた時、一番心配されていたのはテゾーロ様ですよ」
「えっ」
驚くと同時に目を通していた書類から横にいるタナカさんに目を向ける。彼は話を続けた。
「貴方が行方不明になったと知り、その直後に全部下に探すように命令して……そしてご自身の能力でも探されていました」
たしかに彼のゴルゴルの実の探知能力で個人特定は難しくともそれらしき動きの人がどこかはわかるだろう。
といっても私は別世界にいたのだからどっちにしろ無理なのだけれど、だからこそテゾーロも余計焦っていたのだろうか。