第9章 決意
いつもは二人は関係良好で、多少の皮肉やからかいを許しているテゾーロだが、今回はそれに反してタナカさんを律するように話を止めさせた。
なにかに気づいたのかタナカさんもそれ以上は話そうとしない。それに寧ろ、嬉しそうな気さえする。
「……?」
既にタナカさんが突然助け舟をだしてくれたことに加えて、そんな彼らの話し合いにより一層、『名前』は困り顔になる。
それに気づいたテゾーロが目が合うやいなや、彼女に睨みを効かせた。
「(いや、なんでこの流れで私を睨むんだよ!)」
不服だとこっちも睨み返そうとしたら、すかさずタナカさんが"お気になさらず"とでも言うかのように振り返って微笑みかけた。
「ともかくそれはそうとして……テゾーロ様、本題は別です」
「!、別?何があった」
前回のドフィとの出来事があってから、タナカさんのこういった発言に敏感になっているテゾーロは少しほどけていた顔の緊張感を若干戻す。
「あぁいえ、前のことに比べたら些細なことですよ するるるる……少し、興奮した獣どもが」
「獣……(この言い方だと___)」
タナカさんがそういう言い方をする時は決まって、酒がからみ暴力的になった海賊や海軍、貴族などといった___"輩"を指している。
本来はそれこそ部下の仕事だが今は雑務でそれどころじゃない。今ちょうどショーやら会談やらの仕事のないテゾーロがで向かうことも珍しくない。
それに彼自身が対応することで、その"美しい"能力を活かしてショーに仕立てあげれば彼にとってはむしろプラスにもなり得る。
今回も多分そういった話で、テゾーロも察しているのだろう。二つ返事で彼自身が向かうことになった。彼が部屋を出る前にこちらに声をかける。
「……『名前』」
「?なんでしょう」
「あまり、背負いすぎるな」
「!テゾー___」
それだけ言うと私の声を無視して彼は部屋を去ってしまった。
「いっちゃった……」
彼の後ろ姿を見届けて数秒後、いっきに緊張がほどけて膝から崩れ落ちる。あぁ、あまりにもいろいろなことがありすぎた。
重く低いため息がその身に降った責を表すようにこぼれる。
「……お疲れ様でした、『名前』様」
タナカさんはその姿をみて労りの意を込めて声をかける。彼のことをすっかり忘れていた
「っタナカさん、ありがとうございました!」