第9章 決意
俺はあの日、彼女を連れてきた時、テゾーロの配下にある比較的心穏やかな船に飛ばして、そこから彼女の実力を持ってして今の座に着いてもらう手筈だったのに。
いつまでも姿を見ないと思えば天竜人の元にいた。
まさか何か、おかしくなってる……?
「……まさか、ねえ」
嫌な予感がした彼は指を鳴らしてその場を後にし、その姿を消した。
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「……っ!、私の部屋だ」
一方『青年』が出したワープホールを超えた『名前』は気がつくと自分の部屋の、作業デスクの前にいることに気がついた。
ワープホールの道中の記憶はそれだけを抜き取ったかのように一切ない。歩いていたはずだがこの場に来ている。
多分、ここにくるまでにさっき『青年』が連れ出した時のように次元の狭間があったはずだ。
けれど能力者じゃない私がその場を通っても認識できないようになっている……かもしれない。
「身をもって体験すると変な気分だな……」
記憶がスッパリ抜けた形容しがたい気持ち悪さの余韻を感じつつ、ひとまず作業を再開しようと『名前』椅子に座り再開しようとマウスに手を伸ばした。
「その様子だともう業務は終わったんだろうな?」
「ぎゃあ!?」
驚いて後ろを向くと怪訝そうな顔のテゾーロがソファにいたことに気づく。
「っな、ええっと……いつからいたんですか!?」
「それは私の台詞だ、お前が私に気づかれることもなく、音も気配も無しに戻れるとは知らなかったな」
「そ、それは……」
「あぁそれと、部屋に誰をいれた?」
ちらりと彼はソファ前のテーブルに置かれたグラスと空のシャンパンボトルに目をやる
『青年』が飲んでいったものだが誤魔化しようがない。自分も酒の匂いがするわけではないので不本意だが嘘をつくことにした
「さっきカリーナが来た時に飲んでいったものです。彼女に聞けばそう証言してくれるかと」
「……そうか」
そう答えつつも懐疑的な目を向ける彼は信じていなさそうだが、私は彼女と手を組んでいる。きっとテゾーロが問いただしても合わせてくれるだろう
「それはそうとして、貴方こそなんの御用です?」
「お前が消えたとタナカから聞いてな、様子を見に来た」
「……消えた?」
「部下に急用があったようでな、鍵がかかっていたからタナカが部屋に入ったようだがもぬけの殻だと」