第9章 決意
「そう提案、これが本題」
そういい彼の表情が更に引き締まる。今までが本題ではないとはいえ、話の重要度はとてつもなく高いように思うのだが、それらよりも大切な話とはなんだろう。
正直、業務が追い詰められている時にグラン・テゾーロとは別の、私の今後に関してをこんなにたくさん聞かされるとは思わなかったし、もう全てを忘れてやりたい。
とはいえ自暴自棄になってもそのツケは私にまわってくる。少しでもマシになる打開策とは何か……またも私は唾を飲み彼の返事を待った。
「それは、何」
「___君が過ごしたワンピースでの記憶と引き換えに、現世に戻らないか?」
……は?
ポカンとした彼女を放置して彼は話し続ける
「いや、悪かった。
ただ戻れることを伝えていないのも理由がある。正直、あまり勧めたくないんだ……記憶を対価にするのも理由があって」
「……」
「俺は能力で簡単に越えられるけど、さすがに第三者は対価が必要なんだ。でも現世で過労死になってしまうくらいなら、ここに来て望みを叶え、命を賭すほうが幾分もいいと俺は思う。そうだろう?」
「…………」
「いや、そうじゃなくて……それを可能にする手筈としてこの世界でいう、所謂特別な能力が与えられるんだよ。
だけど君は何故か貰えない。このままじゃ君が危ないしそれじゃあ意味がない___だから……」
「………………」
「っ!ああごめん、そうだよな急に言われたって気持ちの整理がつかないよな、勿論現世に戻る際にはちゃんと君が今後難なく暮らせるようにするよ、俺のせいだから。
そうだ!最後に忘れてしまうんだから観光でもしようか!俺いい所たくさん知ってるからさ、例えば___」
「……嫌」
「え?」
彼が聞き返してすぐに、『名前』は息を吸い真っ直ぐ彼を見据えた。
「戻るなんて絶対に、嫌だ」
「!?!?」
彼は彼女の反応に心底わからない、といった反応を示す。彼の中では天竜人の奴隷になり運良く救われたとはいえ、本来持てるはずだった能力が得られない状況で、拒否されるとは思わなかったからだ。
「確かに最初は気を失っている間に天竜人の奴隷にされてたし、自分の夢___麦わらの一味の皆の手助けをしたいことを叶えるのは難しい状況で……それこそ恨みはあったわ」
そういいギロリと目の前にいる彼を睨むと彼は小さく悲鳴をあげた