第9章 決意
「……すごい、映画も全部揃ってる」
久しぶりに見た本と現物でみていた彼らが記されたそれらに近づき見ていると、一定の距離をずっと保っていた彼も横に来た。
「この世界出身でも忘れてしまうことも多くてさ、この映画の時なんか大変だったよ」
そういい彼は映画のディスクが並んだ棚の一番端をとる。1番最初にでたワンピースの映画だ。
「この世界を使って俺が食べた実をいろんな書物から消していたら、置き換えたコエコエの実が映画として出てきちゃったんだ。まさか映画の敵キャラが食べてるとは思わなくて……」
「……」
『名前』自身は前回彼と会った時は違うことにいっぱいいっぱいで気づいていなかったが、そういえばこの映画にコエコエの実がでていたことを彼の話で初めて気づいた。
いや、そんなことよりも彼の能力の凄さに驚くばかりて今はそれどころじゃないが。
「__あぁごめん!俺の話はどうでもいいんだ。それより君にちゃんと話さなきゃいけないことがあってね。」
「……正直、今驚きすぎて頭に入るか、わからないけど」
「いいからいいから」
彼は後ろにある椅子を指さして座るように示す。戸惑いながらもとりあえず従うことにした。彼も私の目の前の席に座る。
「で、話って?私をからかいに来たわけじゃなかったの?」
「それはもうさっきしたでしょ、正直、結構緊急事態なんだよね」
「緊急事態……」
ごくり、と唾を飲みその言葉に身構える。話が長くなりそうだ。
「じゃあその話をするとして急だけど、君は今の状況と一緒の___異世界転生ってなんとなくわかる?」
「……異世界転生?」
ふ、と『名前』の脳内にそういった物語の漫画、所謂なろう物が浮かんだ。そして今私の状況そのまま当てはまる夢展開、夢小説も。
「私は現実で見てたから知ってる……見たこともある」
「じゃああの系統の物って飛ばされた主人公は一体どうなってる?」
「その飛ばされた世界では偉大な、チートのような力を得て悠々自適に暮らしてる、よね?私もああなれたらもう少しマシだったのかな……」
それこそ彼のもつコエコエの実の能力ならワンピースも現実も自由に過ごせるだろう。いや、私が持ったところで彼のように使いこなせるかは別だけど。
「そう、能力が開花して楽しく過ごせる。それが異世界転生の"普通"なんだよ。」
「……"普通"?」