第9章 決意
さてドフラミンゴとテゾーロの共有物となった『名前』。
……こんな倫理観のない文章から始まる章、なかなかない。
それはさておき彼女は事務作業中、ブラック企業時代に酷使した身体に染み付いた高速タッチタイピングでキーボードを叩き文字を打ち込んでいく。
ふとモニターに映る日付に彼女は手を止めた。ドフラミンゴとテゾーロがおこなったあの賭博から1週間が経っていることに気づいた。
「あんなことあったのに、何も無い……!?」
そうあんなことがあったのに彼女の身は、処遇は1週間経っても何も変わらないのである!
『名前』は共有物になったとはいえ、仕事はいつも通りあるしなんならドフィが来たことで雑務は大量に増えた。もちろんこの仕事は私だけのものではないし、部下に任せてもいい。
だが、彼らのほとんどはあの日の朝に起きたドフィの気まぐれによる無差別攻撃で重症を負い業務が滞っているから難しい。
それに私と違い腕っ節が強い彼らだからこそできる業務や、それこそこの世界の人だからこそ対応できる専門分野の業務を担う彼らに頼むのはあまりにも酷だ。
正直今の状況は現世で言う繁忙期の仕事量で辛いが、そのほとんどが雑務かつ事務作業だからこそ、それしかできない私がやらなければならない。
そう……通常人の私物となったこの展開は少女漫画なら仕事が一切なく、"___傍にいるだけでお前はいいんだ"とか言われるのだが、この世界においては一切通用しない。
なんならあの日の翌日から1時間金の枷退勤(?)によりとんでもない筋肉痛に悩まされてそれどころではなかった。
「……まあそうだよね、ドフィのせいでしっちゃかめっちゃかになったからテゾーロも忙しそうだし、重症者も多いから欠員だらけで死ぬほど忙しいし……ドフィのせいで!!!」
『名前』はドフィへの憎悪を指先にこめエンターキーを叩き潰すがごとく弾いた。もう二度とくるな羽野郎!いや糸野郎?
どっちでもいいがとにかく彼女は目を充血させ鬼の形相で仕事を片すのにふけっていた。
「___いやあ忙しそうだね!『名前』」
「うわあ!?」
突然背後から名前を呼ばれ飛び上がる『名前』の身体。
テゾーロならもう慣れたからそうならないにしろ、あまりに爽やかな声色だったためである。そう爽やかな、声色……
「君、あのときの__!」