第8章 異質
そうして彼女の価値に気づきだした頃、いつもなら賭けにのらない、なんならおこなっても1回戦で手を引くテゾーロが、その立場を持ち込んだ。
その反応が面白くて俺も七武海の座を賭けの場にだしたが……フフフ、アイツの焦りようも良かったな。
ともかく、天竜人の船を爆破した頃からそうだったが……アイツにとってどれほど『名前』が重要なものかを改めて思い知らされたのはあの時だ。
そして最後、『名前』の自惚れに苛立ち少々手荒なことをしたが……
『それでも私は何が起きようと、私ができることで死ぬ気で反抗します。貴方がどれだけ私を自惚れだと言おうと、そんな私が愚かだとしても』
『___強者であろうと関係ない。変わらず私は私の正義を突き通す。』
『___だから貴方に何も出来ないと言われる筋合いはない!』
あの状況で臆するどころかあんなことを言いやがる。
しかも___
「__あの女、俺の寄生糸を千切りやがった……!」
あの時のことを思い出しながら彼は手のひらから糸を出してみる。パッと見る限り糸に不調は見られないし、もしそうならば俺自身がなんらかの問題があるはずだ。
けれどそんな様子もない。あの後船に戻る前に適当な奴に試したが切れる様子もなかったし問題もなかった。
となると、もうあの女……『名前』によるものとしか思えない。この糸は身体能力と覇気がこの糸を超える力があって千切れるもの。だが『名前』にその力も覇気もあるとは到底思えない。
___いや、まさか?
「……フフ、この期に及んで隠してやがるのか?!フッフッフッフッ!!」
彼はあまりの面白さにその場にあった葡萄酒の瓶を、その場にあったサイドテーブルを壊した。
ああなんて、面白い 玩具 を見つけてしまったのだろうか!
「あのナリで?!……面白ェ、暴いてやろうじゃねェか!化けの皮って奴を!!!」
どう調べさせてもこの世に存在を示すものがない、記録が……情報が一切ない『名前』が一体どういう者なのか
「せいぜい楽しませてくれよ『名前』?……」
彼女に手を下さなかったことでこの世がどうなるのか、どう変化を与えるのか。
テゾーロと組むことで一体何をしようとしているのか。
いくつもの多くの『名前』に対する疑問を一気に抱えたドフィは自室を自身の笑い声で満たした