第8章 異質
「……え、いや……えっ?」
「せいぜい楽しませてくれよ、お前がこの世界に何をもたらすか……フッフッフッ……!」
そういうと彼はそのまま私の横を通り過ぎて光る街へと消えていった。この方向を考えると多分港のほうに向かったのだろう。もう、彼は帰るようだ。
「終わった……?」
「……やっとか」
意外と最後はあっさりと終わり、呆気に取られていると気疲れした様子のテゾーロが横に来た
最初こそあまり頼りにはならなかった彼だが、最後に私の命を助けてくれた。また借りが増えてしまったな。
「さっきはありがとう、テゾーロ」
「!、いや……むしろ悪かった」
「え?」
「あの時お前に話をするよりはやく帰すべきだった、悪い」
「……」
確かに彼が私に勝敗を話すより先に帰ることを急かせば私はドフィに命を脅かされることはなかっただろう。
けれど結果論にはなってしまうが、今となればこれで良かった気もしている。何となく……ドフィの偏見をほんの少し消せた気がするからだ。
「いや、大丈夫です。私が賭けで共有物となった以上、これからも彼には世話になるでしょうし……そう気を落とさないでください。」
「!」
「それより本当に助かりました。あの場にはいなかったし怒鳴ってはしまったけれど、賭けで私を手放さずなんとか奪い返そうとしてくれたこと……嬉しかったです。」
そう素直に感謝すると調子が狂うのかテゾーロは少し照れくさそうにそっぽを向いた
「……私はただアイツの勝手に振り回され続けるのは癪に障ったからだ。お前の為とかではない」
「へえ……まあいいです、帰路に向かいましょう」
『名前』は未だに取り繕うテゾーロに呆れつつ二人はTHE REOLOに歩を進めた。
流石にこの船を賭けたのを聞くとそうとは思えない……が、今回は問い詰めるのはやめよう。本当に助かったのだから。
そう心から感謝しきを緩んだためか、つい『名前』は心の声が漏れてしまった
「この船にいられてよかった……」
「!」
その一言がテゾーロの心を大きく揺らすとは知らずに。
ふと彼女は横で目を見開く彼に気づき疑問を浮かべる
「?、どうされましたか」
「ん、あぁ……お前結構凄いな……」
「は?」
急な褒めに『名前』は立ち止まる。こいつ急になんなんだ?と引き気味の表情だ。
「人が褒めてやったのになんだその顔は」