第8章 異質
解放された『名前』は自身がちゃんと自分の意思で身体を動かせることを確認し、ホッと胸を撫で下ろした。とりあえず私は彼の手から逃れられたようだ。
どうやら『名前』は無意識に彼の寄生糸を切ったことに気づいていないようだ。
いや、そもそも絶体絶命だったあの状況で彼女の頭にドフィの能力の特性について浮かばなかった、が正しい。彼女にとってはまず一時攻撃をしようとしてきた彼から解放されたことを喜ぶことが優先されただけにすぎない。
とはいえ___
「……」
「(今のドフィは少し、ヤバいかも……)」
彼の手から逃げ出せたとはいえまだ立場は変わっていない。今彼が軽く私に攻撃すれば簡単に倒されるだろう。
無駄だろうが何もしないよりマシだと思い『名前』は彼の次の手に身構えた。
「……フフフフフ」
「?」
「……フッフッフッフッフッ!それでお前は突き通すつもりか?お前の正義とかいうやつを!」
「!」
どうやら私が無意味に身構えていたことに対し笑っているらしい。失礼な奴だ。
ドフィは私をひとしきり笑った後、どうやら同じくいつでも攻撃態勢にはいれるようにしていたテゾーロの姿に気づき口元の弧を深くした。
「テゾーロ……(気にかけてくれてたんだ……)」
「フフフ、安心しろよ。もう俺は何もする気はねェ……それよりも見たいモンがあるからな。」
「……そう、か」
どうやら彼の言葉を信用したらしいテゾーロが体制をといて、彼に向き直った。
その様子からドフィはもうなにもしないのだろうと考え、『名前』も少し安心する。多分私は明日の朝日を拝めるのだろう。
「おい『名前』」
「!……何か」
少し上機嫌そうなドフィが屈んでこちらに話しかける
「……フフフ、どうやら少しお前のことを甘くみていたようだな」
「っ急に……はは、弱者だと言ったのに?」
「勘違いするな、お前は弱者だ……だが」
「!」
彼の手がまた私に振り下ろされる。咄嗟に目を閉じたが__今度は彼の手は優しく『名前』の頭を撫でていた
「俺がお前を気に入るぐらいには……他とは違うらしい」
「……!?!?」
「(あいつが……ドフラミンゴが気に入った!?)」
この行動に驚いているのは『名前』だけでなくテゾーロもだった。ドフィは傍からは理解されなくとも彼なりに微笑み撫でているようだが。