第8章 異質
確かに、私は今のまま大きく物事が変わらなかった場合の、本筋の未来を知っているに過ぎない。
強気にでてはいるけれど、実際は彼の言葉通り弱者に過ぎない。彼の言葉は正しいだろう。彼なりに私を叱責してくれているとわかっている。
___けれど
「そう、ですね。私は今貴方にこうやって身動き取れない状態にされているようにこの世界においては弱者です。けれど」
「!?」
一度深く目を閉じ、『名前』はドフィを一直線に見据えた。彼女の動かないはずの片手が微かに震えている。
「それでも私は何が起きようと、私ができることで死ぬ気で反抗します。貴方がどれだけ私を自惚れだと言おうと、そんな私が愚かだとしても」
例えこれが正しくなかろうと、私はきっと
「___強者であろうと関係ない。変わらず私は私の正義を突き通す。」
「……!」
その相手が貴方でも……テゾーロでも……それが例えこの世界の神だったとしても
「___だから貴方に何も出来ないと言われる筋合いはない!」
「?!お前っ」
「!?な……」
『名前』の瞳が一瞬輝き、ドフィの目を捕える。
瞬間、ブチンッと糸の切れる音とともに彼女の片手がドフィの腕を掴んだ。勿論、それ以外は一切動かないし彼女の腕1本が自由になろうと今の体制は変わらない。彼女は弱者のままだ。
しかしその行動がドフィとテゾーロ両者ともに衝撃を与えたのには変わらなかった。
本来ならば能力を持たない彼女にドフィのイトイトの実の能力の技の一つである寄生糸を切れるはずがないのである。
途端、動揺した彼の顔が険しくなり空いていた片手を五色糸の手に変え彼女に向けたのは言うまでもない。
しかしその挙げた手をテゾーロが掴み止めたことで、間一髪その攻撃が行使されることはなかった
「!」
「やめろ!貴方だけのものではない!こいつは……私の、部下だ……」
ゴルゴルの実の能力を使えばドフィを固めることも出来ただろう
しかし彼はそれを考える余裕もなく身体が動いていた
ドフィは焦るテゾーロに反射的に焦ったものの彼女が脅威でないことを再確認し落ち着くことができた
「悪い、少し……動揺した」
「!」
そう返されたテゾーロは掴んでいた腕を離す
ドフィは五色糸にしていた手を収め、『名前』を掴んでいた手からも、寄生糸からも完全に解放した。
「!っはぁ……はぁ……」