第8章 異質
ぎり、と髪を掴む彼の手に力が入り、徐々に『名前』の頭にめり込んでいく。
「づっ……何が言いたいんです__い゛っ」
「おい!」
ドフィは目と口で抵抗する彼女の側頭部を掴む手に更に力を込め、自分自身に引き寄せる。テゾーロは制しようとするが当然ドフィは無視して続けた
「この世界はバカばかりじゃねェ……どれだけ位の高いアイツの隠れ蓑にいようがこの場にいる以上、何も存在を証明できねェお前はいずれ世界政府から監視される……!」
「!」
世界政府、その言葉に背筋が凍るような何かを感じた。そして同時に背中の竜の蹄に鋭い痛みを感じる。
もし私がこの場にいながら所在も何もかも不明であることを政府側に不審がられ、背中の印を見られたら___
「その顔を見るに、都合が悪そうだなァ?フフフ……」
「……」
彼女の動揺はその表情だけでなく静かに呼吸をしているものの、微かに息が荒くなるのを表す胸元の浮き上がりが表していた。
……確かに今まで見ないふりをしていたけれど、突然この世界にきた私には戸籍も存在を証明するものも記録としては一切ない。
そんな私が大きな権力を持つテゾーロの船で、なおかつ能力もないただの人間が幹部としていることは……これまでは無かったがいずれ、少なくともルフィがこの場に来るまでに認知され危険なめにあうのは避けられないだろう。
何とか隠れ続けようとこの世の誰もがくるこの場では意味をなさない。
「……(確かに、私もこのままじゃいられないな)」
「……?」
__そんなことを考えていた彼女の姿にテゾーロは『名前』にはまだ裏があると確信し、黙って見つめていた
それと同時にそんな彼女に対し、囃し立て裏を垣間見ようとするドフィの間の詰め方に関心もしている。
「だがしかし、だ……お前は今俺の所有物となった!」
「……」
「所有物……フフ、つまりお前の後ろに俺がいることになったわけだ……これがどう影響するか、怖いもの知らずなお前でもわかるだろう?!」
「そうですね、そんな私に何を求めているんです?」
「……根拠もなく何もかもできるつもりでいるようだが、自惚れるのもいい加減にしろ」
「!」
「お前は所詮、この世界においては弱い立場にすぎない!この世は強者が正義だ!フッフッフッ……お前も身に染みてわかってるんじゃねェか?!」