第8章 異質
「本当ありえない……なんでいつもこうなるの……」
今思えば現世で勤めていた会社でも私の上司や社長は同じように気軽に社運をかけては部下の私たちが泣きながら責務を全うしていた。
ただでさえ普段から徹夜続きなのに、あれだけで何回エナジードリンクに万札を溶かしただろう。
あぁ思い出すだけでも胃がキリキリと痛む。
そして今や、現世とは大きく変わっていろんな意味で荒波だらけの大航海時代のこの世界。
今や私は社運はおろか常に自分の死と隣り合わせになっている。
もちろん変わらずここの私の上司もそのご友人(?)も賭博に国や権威を持ち込む始末。違いはこの世界の規模のみ、なんなら余計酷い。
「なんで私の上司はいつも、変な方向に思い切りが良すぎるのよ……」
「ハハハ……?何の話だ」
「なんでもないです……」
テゾーロになんだこいつ、という視線を向けられつつ自分の巻き込まれ人生に対して涙を流しながら自分を慰めた。
「うう……ごめんなさい気を取り乱しすぎました。ええとドフラミンゴ様、先に教えてください結局何回したんです?」
「ん?あァ安心しろ、これが最終戦だ……フッフッフッ、良かったなァこれ以上賭けられるとお前の身がもたねェもんなァ?」
「……おっしゃる通りです」
そうこれ以上何かを掛けられては私の心労が計り知れない。既に一般人の私を初めに賭けていくものとしてはおかしいものばかりだが。
「まァお前とは長い付き合いになりそうだがな」
「そうですか……え?」
「3回目がどうなったか、まだだろう?」
私はこの船に残り今までと変わらない事実を先に伝えられてはいたが、勝敗は確かにまだだった。ドフィから聞き流せない言葉がでた気はするが。
「簡単にいうと休戦、引き分けだ。フフフフ……!終わりが見えねェからな」
「(賭けるものの規模がデカすぎるからでしょうよ)……はあ」
「その結果お前の処遇はアイツの部下兼、俺のモノになった」
「………ヒュッ」
彼のとんでも発言に喉奥から息が詰まる音が大きく鳴った
待って、私の心労やっぱり重いじゃないか。なんだよ俺のモノって。
「……ヒュー……ヒュー(凄いな……ここまでくるともはや諦めの境地にもなってきたな)」
「あ?こいつ大丈夫か?」
もはや喋られない『名前』にドフィは割とマジめに心配した。お前のせいだ馬鹿野郎。