第8章 異質
「いや、はッ……なんで……!?……なんで!?」
驚き狼狽え、かろうじて整えていた口調も崩れた『名前』の様子にドフィは酷く喜び笑った。テゾーロはその後ろで少し恥ずかしそうにしているが。
何度もドフィとテゾーロを交互にみてはなんなら理解できないと苦しみだしている。
「いや、お、おかしいじゃないですか!?貴方もその、勝負を続けるためとはいえ、七武海!?仮に負けていたらどうするんですか!?」
「……さァな?」
ブチッ
それまで焦り動揺していた『名前』だが、ドフィの何も考えていなかったと言わんばかりの責任感のない返答に一周まわって彼女の中の何かが切れた
「___さァなじゃないんですよ!?!?!
アンタのその一言で海軍も貴方の船員も巻き込まれてるのわかってるんですか!?!?」
「「!?」」
ついに取り繕っていたもの全てが崩れきった『名前』の姿にドフィもテゾーロも流石に動揺した。
そこそこ歳も重ねて権威を築いた彼らがまともに叱られることは今までなかったのもある。
……とはいえ、それまで最低保たれていた尊敬の欠けらも無い荒れた口ぶりとあまりの豹変ぶりに2人ともむしろ吹き出してしまったが。
「(これがこいつの本性……いや待て面白すぎる!)ブハッ___っぐ、ヒ、フッフッフッ!!!」
「笑い事じゃないんですけど!?!?」
テゾーロも『名前』の普段じゃみられない姿に加え、恐れと嫌悪があったドフィも彼女に対して大笑いする異様な光景、また彼の反応に同調しつつ呼応するように吹き出した
「___ぶはっ、く、ひひ」
「___ていうかテゾーロアンタもだけど?!?!事務員一人にこの国を賭けるだなんて何やってるんですか!?!?」
「(こいつ誰が相手かもわかってこの、反応!)っひ……ぐふ……ハハハハハ!!!」
「……フッフッフッフッ!!!」
「ってさっきから何2人とも笑ってんだ!!!!!」
つうか、それでどっちが勝ったとしても荷が重くてそれだけで私が精神的にイカれるわ!!!というと更に2人は吹き出した。
もちろん『名前』は大真面目である。
「っはぁ……はぁ……ありえない……本当にありえない」
我慢できずそこそこ歳を重ねた大の大人、しかも海賊とカジノ王相手に説教をしてしまったが相手は笑うばかりで流石に『名前』の疲れが先にきた。