第8章 異質
「!3回目……」
テゾーロとドフィの会話をよそに『名前』はまた驚いていた。今回のゲームが3回戦までもつれ込んだことについてだ。
何故ならばそうなるということは、2回戦で大敗したドフィが必然的にテゾーロに納得させられる"何か"を賭けたことになる。
今回の賭事はいつもの金銭の勝ち取り……否奪い合いではない。彼らは事象や所有物、権利を元手にしているのだ。
最初ドフィは自信が二度とグラン・テゾーロに立ち入らない……その権利を賭けるかわりに、テゾーロには私を賭けるように交渉した。
その結果ドフィはテゾーロからみても稀に見る大勝利を収めた訳だが、その勝ち方を逆にとり今度は彼が"何か"を持ち込み2回戦を挑み逆転した訳だが……
そんなテゾーロにとってすぐにでも終わらせたい状況で、ドフィは更に"何か"を持ち込んだ。この状況下でもテゾーロが勝負を受け入れる何かを。
ゲームをする前からいつもの賭事、それもドフィとテゾーロがそれまでにしていたものと比べても規模が違う……らしいような場の空気感とテゾーロの反応を感じていたが何が彼らをそうさせたのだろうか?
……いや、そんなこと考えても私の推測から"何か"も動悸の答えもでない。気を取り直してドフィの話に集中した。
「あァそうだ3回目だ。俺はやる気はなかったが何せアイツが2回目でこの船……いやこの"国"ごと更に賭けてきたからなァ!」
「__グラン・テゾーロを!?」
思わず大きな声を出してしまった。だって、船をだなんて……つまり私だけの損失を防ごうと彼は彼の立ち位置ごと投げ打ったことになる。そんなこと、彼から想像できない。
……少なくとも、彼の設定がある限り。
つい奥にいるテゾーロに懐疑的な目を向けてしまったが、そんな私の視線に対してすぐ目を逸らすあたり本当らしい。
「ありえねぇよなァ!アイツに限って……フッフッフッ、お前相当気に入られてるらしいなァ、『名前』!」
「いや、そんな……違……そう、みたいで、すね」
信じられないし否定したいが、今話し相手はドフィだ。しかもこの結果を前に否定しきれない。
受け入れられなくとも頷くほかなかった。
「フッフッ……まァいい、俺もそんなお前が気になってつい七武海の座を賭けたからなァ!」
「……はあ!?」
流石に耐えられず『名前』は本音ダダ漏れの返答になってしまった。