第2章 グラン・テゾーロ
「だからアンタには本当感謝してる……俺だけじゃない、この船に乗る奴隷皆だ」
「!」
久方ぶりに誰かの役にちゃんとたち、感謝してもらえた。少し胸が温かい。
「いいよ別に、それより自分の身を守って」
「何も出来なくて……本当にすまない」
そういい彼は役目を終えたのか離れていった
今日からしばらく天竜人も貴族もグラン・テゾーロの中で過ごす。そうなると船の中に残るのは奴隷達のみ。
その間彼等は天竜人の脅威に怯えずに過ごせるだろう。
何とかしてあげたいのはやまやまだが、そうなると自分の立場が危うい。
「(私こそ、ごめんね)」
ふと鏡に向き直り自身の姿を見る
綺麗に纏めあげられた長い髪。美しく飾る宝石。真っ白なドレス。美しいけれど全部罪のない民衆から得た金で出来ている。
「(ちっとも嬉しくない!)」
憎たらしい自分の姿に苛立ちを覚えつつ、その場を後にした。
扉をあけると目の前にチャルロスがいる。急いで作り笑顔に変える。
「『名前』!よく似合ってるえ、流石わちし!」
どうやらこのドレスはチャルロスが選んだらしい……今すぐにでも破り捨てたい。
その気持ちをぐっと堪えて『名前』は笑顔のまま接した
「……チャルロス様が選んでくださったんですね!ありがとうございます」
「わちしのペットだから当然だえ!さぁ早くいくだえ!」
「仰せのままに」
彼の抑えきれない興奮に少し笑いそうになる
『名前』はチャルロスの横にいつも通り寄り添い彼に続いた。
…
そうして甲板にでると金の海の上を走り金粉が空を飾っていた
人々を歓迎するかのように舞う金粉、あれは罠
付着した私達はいつでもテゾーロに金で固められ仕留められてしまう
「(まぁコレを知ってた所で……避けようがないからなぁ)」
金粉は体に付着し雪のように溶けていく
呼吸をする度に身体の中で染み込むから避けることは不可能だ
「(けどテゾーロにとって気に食わない行動をしない限りは大丈夫。それより天竜人がどんな行動をとるか)」
チラリと横にいるチャルロスを見やると空をまだ眺めていた
「下人にしてはやるだえ……」
「(感心するとは珍しい……けど素直に認めればいいのに)」
歓迎の金粉を見終わり船を停めると一人の女性が私たちを迎えた