第8章 異質
「賽の目にしたり顔で笑うあいつの顔はそれは傑作だった」
「傑作って……開き直りですか」
こいつに少しでも期待した私が馬鹿だったと彼に構わずに歩を進める。そんな彼もなおも声のトーンを変えずにまだ私に話している訳だが。
「ハハまさか、さすがにその時は私も驚いたよ……"1回目"であんなに運を出し切られるとは思わなくてね」
「……"1回目"?」
進めていた足をとめて彼の方に振り返った。さっき見たしたり顔から、彼はああと返したのちにそれはもう爽やかな笑顔に変えた。その顔が見たかったとも受け取れそうなくらいに。
「私が1回のゲームで負けたまま終わらせるわけが無いだろう」
「そ、それはそうだけれど」
ただそうなると彼は更に何かを賭けたことにもなる。ドフィが納得するだけの価値ある物は一体なんだろうか?そんな疑問が残る私を無視して彼は話を進める
「私は人より多く賭博を経験している。いわば、賭けどきがわかる」
「賭けどき……」
確かに彼は金銭はおろか命もなにもかも、この世界でとんでもない程賭けを経験している。因縁のドフィが相手とはいえ今回も何かを感じたのだろう。この国を務めるならまあそんな直感もあっておかしくない。
「つまりその賭けどきを2回目に感じたと?」
「あぁそうだそれで私は___」
「勝ったっていうのか?それは随分とご機嫌な解釈だなあ!」
「「!」」
声がした方向に『名前』が振り向くとそこにはドフィが立っていた。それはそれはとてもいつもどおりの様子で。
「おいそんな顔するなよ、俺は客だぜ?フッフッフッ……」
げっ顔に出てた、と営業スマイルに戻すがテゾーロも多分私と同じ表情をしていた。なんならドフィの顔が私に向いているからか未だに戻ってない。
ただ、この様子だと私の中で余計2人の勝敗がややこしくなった。
もうテゾーロの口ぶりから、やたら話長いけどこれ勝ったんだろとばかり思っていたけれど。
ドフィの視線がテゾーロに向き彼もまた営業スマイルに変化する
「ハハ、まだいらっしゃったんですね。もう用は済んだはずでは?」
「お前……本当態度かわるな……」
「なんの事だか」
お客様スマイルに私とドフィへの対応それらに関しては完全に同意見だ。わかるぞドフィ。
ドフィのドン引きぶりにすこぶる共感しつつ彼らを少し遠くから見るような目でみていた。