第8章 異質
彼の表情をみて何が来たのかと目線の先を見ると少し遠くに気だるそうな顔をしたテゾーロの姿が見えた
「テゾーロ?!」
「じゃ俺は巻き込まれたくないから帰るね!」
「!待ってまだ__」
彼に視線を戻した頃にはもう姿を消してしまっていた
「まだ……名前も聞けてないのに」
「いつまで私を無視する気だ?」
「!あ、えう」
辺りを見回すもののもう 彼 の姿はない。かわりにさっきまで遠くに見えていたはずのテゾーロが目の前に立ち尽くしていた。
いろいろと想定外の出来事に『名前』は頭が回らず、言葉にならない声を漏らしてしまう。
「せっかく私自ら迎えに来たというのに、酷い奴だ」
「っな、そんなつもりはない……んですよ!それよりもうゲームはいいんですか?」
「ああ、終わった」
あまりにもさらりと返答され少し動揺する。だってテゾーロとはいえど相手はドフィ。
私がこの世に介入したから起きた出来事とはいえ、一筋縄ではいかないはず。実際それが始まる前から大変だったのだから。
とはいえ、彼の顔が存外涼しげで余裕があるし、なんなら私の様子に少し呆れているようにも見える……どいつもこいつも失礼だな、私の境遇を知らないとはいっても!
とはいえ、そのことをテゾーロには決して言えないが。
「ハッ、そんなに不安か?勝敗が」
「そうに決まっているでしょう!賭けられているのは私です。本人の許可なく勝手に処遇が賭けられてるのに!」
「当たり前だろうお前は私の駒でしかない」
そういい嘲るように笑むテゾーロ
いちいち腹が立つ言い回し、思った以上に余裕そうだ。さっきはあんなに狼狽えていたくせに……腹立つ!
「で、結局どうなったんですか」
腹の虫を抑えて率直に聞くと彼の口元が弧を描いた
「負けたよ」
「!?」
正直、私はずっと余裕そうな態度はもちろん彼が迎えに来たことからてっきり勝ったのだろうと思っていた。
いや、まあわかっていた。現実はそう思い通りにいかないことを……余生を問題なく過ごせることを祈りつつあぁもうドフィの手配する島に期待するしかない___
「それはそれは僅差で負けたよ。アイツが一度取り下げた手を戻したことで負けた」
「へ、へぇ……そうで、すか」
動揺している自分を必死に隠すために私は取り繕った表情のまま彼の横を通って帰路につこうとした。だが彼は無視して話し始める。