第8章 異質
その後も能力を繰り返した後に自身の能力こと、コエコエの実をきちんと理解するに至ったのである。
「因みに能力についてまとめると〜」
1.世界と世界を超えて、行くことができる。
2.行く先が創作物である場合は、時系列や場所、パラレルワールドなどの指定が可能
3.別の世界に行こうと、現世の時間は止まらない。過ごすだけ本人の時間も同様に進む。
4.現世の場合、未来や過去に行くことはできない。
5.他人を連れていくことも可
「……〜って具合になるね!」
なるほど、夢小説特有のむちゃな設定だと『名前』は理解することを諦めた。
「つまり、私はアンタになんらかの手法でここに連れてこられたと?」
「そう、現世は現世でも電子世界に入って、君の会社のアンケートに成りすました。答え次第ではここに飛ばさなかったけどね」
「……アンケートに見せかけて、私がどういった考えを持ってるかを聞いたってこと?」
「そう」
彼はにこやかに答える。しかし、答え次第だとは言うけどこんなの無差別テロに変わりないのでは無いだろうか。
とはいえ飛ばされた今、それを責めてもどうしようもないので諦めた
「はぁ……まだまだたくさん聞きたいことがあるんだけれど、いい?」
「もちろん」
そう言って屈託のない笑顔で返す彼に既視感を覚える
少女漫画の世界なら今頃ヒロインの胸を跳ねさせているのだろう。
まあ私はもう二度とそんなふうに見えないことが確定したのだが
「わかった。
単刀直入に聞くけど、それほどの能力を持ちながら漫画に出ることなく、物語に出演しないのは何故?」
彼ほどの能力があれば漫画にも出るはず、それにコエコエの実が本当なのだとしたら図鑑にも当然記されるだろう。
その場合、悪魔の実の図鑑を暗記して最強の能力を得ようとした黒ひげのティーチは見逃さない筈だ。
彼が奪ったグラグラの実よりも……いや、
そもそも、彼が最初に選んだヤミヤミの実よりも何倍も強すぎるのだから。
「ああ簡単だよ、俺がこの能力で存在もろとも消したんだ」
「は?」
「なんならコエコエの実って名前すら、正直勝手に言ってるだけなんだよね。実際の情報は消した……あの実はこの世界には良くないからね」
彼はいくつもある世界線のこの作品の世界に飛ぶ度に、彼の実の記録を消し現実の、あの作品の筋書き通りの世界にしているそうだ。