第7章 天夜叉
「そんなわけないでしょう!無理です」
「そう早まるんじゃねェよ、少しは聞け」
立ち上がり席を後にしようとしたが彼の凄みを持った声を聞いて辞めた。彼がそう簡単に逃がしてくれるわけない。
大人しく席に座り直して彼の話を一通り聞く
……結論から言うと、彼は 嫌がらせ をしたいらしい。
「__つまり、テゾーロへの嫌がらせの為に彼を裏切って貴方に移れと?」
「まぁそうなるな」
簡潔に言いまとめると彼はより一層嫌な笑みを浮かべた。
「その後は自由にしていい、今後不自由ねェくらいの報酬はやる。こんな船に一生無駄にするのも嫌だろ?」
「……」
「なんならお前を普通の世界に戻してやってもいい……住む島も家も用意してやる。どうだ?悪くはねェだろ」
確かにテゾーロに衣食住にある程度の地位まで手配して貰ったとはいえこの船で毎日命の危険を感じながら過ごすのは変わらない。
確証は無くとも、ドフラミンゴに間接的に守られつつ余生を過ごすのは今よりは普通に近いかもしれない。
あのバカから離れて余生を脅威なく過ごせ___
「いや、アンタもあのバカと変わんないわ」
「あ?」
「あっ」
心で出したはずの声がまるまる出てしまい分かりやすく『名前』はキョドった
いやよくよく考えたらドフラミンゴにのって余生過ごそうがテゾーロの船に乗り続けようが変わらないし危険に変わりない
って思ったけどまさかまるまるでちゃうとは、やったな自分
その声をしっかり聞いた彼は取引していた時の嫌な笑顔とは変わって分かりやすく怖い顔をしている
それはさながら、この世界に来る前務めていた職場の機嫌がすこぶる悪い上司を思い出させた
同時に起こったその上司との数々の嫌な思い出がフラッシュバックし、怖がりつつも『名前』はなんとか謝罪を口にした.
「すみませんでした……口が、滑りました……」
「……」
以後も彼は怖い顔のまま酒に口をつけ、ため息を吐く
1時間とも思えた数秒後、彼は立ち上がり『名前』の肩に手を置いた。それにピクリと体が跳ねる
「っ、」
「……おい、出るぞ」
「!は、はい」
そういい彼はさっさと店を出る
できることなら会計を終えても外に出たくない……
青ざめたまま『名前』はドフラミンゴの後を追いかけた