第7章 天夜叉
さてそろそろいくか、と『名前』は鞄を持ち資料を突っ込んで扉を開けた。
「……今度は静かすぎる」
さっきまでとは違い妙に静けさがある廊下。
さっききいた慌ただしさを疑うレベルだ……
まあいい、知らないけど事が済んだのかもしれない
欠伸を1つして歩き出した瞬間だった。
「…………っ!?」
___体が、動かない。
な、なんでっ!
……と言おうとしたが今度は口すら動かなくなってしまった。
よく見ると自室から出て少し先にクルーが何人かが のされているのが見えた。いや、倒されている?
あきらか緊急事態なのを把握した『名前』は動かない体をまず無視して目で周りを観察しつつ考えた。
この階はタナカさんが通すかエレベーターで判断しているはず。
もしも窓を壊されていたとしたら音はなるはずだしなんならテゾーロの能力でおのずと気づき対処されるだろう。
となれば……彼より、テゾーロよりも権力の高い人__
あ、と思いついたその時だった。
「__フッフッフッ、意外と冷静じゃねェか。話が違うなぁ?」
物凄く聞き覚えのある声が聞こえ確信へと変化した。
続けて今度は別の人の吐息が聞こえる、ため息だろうけど。
「……そろそろ解放してあげてください」
これ以上私の部下で遊ばないでくれと珍しく低姿勢な私の主人の声が聞こえた途端、笑い声とともに動かぬ体が解放された。
すぐさま振り返り目を見張る
「__!!!」
ピンク色の羽の上着を着た、サングラスの特徴的な、3メートルの悪目立ちの凄い……そう、通称相応しく天夜叉。
「フッフッフッ……」
天夜叉、 ドンキホーテドフラミンゴ が立っていた。
……やや後ろに苦虫を噛み潰したような表情のテゾーロを添えて。
成程、だから大騒ぎになって部下が無駄にのされているわけだわ。無茶苦茶なドフラミンゴならやりかねない。
「__はじめまして、私は」
「……」
上から伸びてきた手が『名前』の顔を掴んだ。少し驚いた『名前』がピクリと反応する。
目元がサングラスで隠れているとはいえ常時弧を描く口元からでも悪そうなことを考えているのがすぐわかった
「___例の女はお前だな」
「?」
は?と言いそうになったが掴む手の力に嫌な予感しか感じない為黙っておいた。