第7章 天夜叉
グラン・テゾーロに眠れる夜は無い。
いつでも光り輝くその船はいつだって目を覚ましていた。
彼らはひとしきり騒ぎ、翻弄された後、朝に一度静けさを得る。
次第に次に目覚めた者達により船は目を覚まし続けるのだ。
そんないつだって特別な船にも……異常は訪れる。
__例えばそう、急な来客だ。
その日はホテル内も騒々しく、従業員並びにクルーが皆焦りを持ち駆け出して行った。
皆が様々な感情を口にしながら行先は黄金帝の自室。
彼等が意を決してノックをするよりも先に扉は開き、寝ぼけた眼の黄金帝は機嫌悪そうに彼らに目をやった。
「……どうした」
「大変ですテゾーロ様!アイツが……あいつが!」
「?アイツ」
目を擦りながら問うと言いにくそうにした手下共がついにはっきりと叫ぶように伝える
「___"天夜叉"です!」
「!?」
それが黄金帝のその日の目覚ましになるとは知らずに。
…
「……ふぁ、もう朝か」
一方むくりと起きつつこれまた眼を擦る彼女こと『名前』は時計をみつつ欠伸をかました。
相変わらず広いベッドに慣れないなと改めて思いつつ、ベッドからでる。
そのまま顔を洗いに洗面所へ行くと何やら外が騒がしいことに気づいた。
こっちの部屋にまで響く大量の足音、焦りからでたであろう声。珍しく外の賑やかな音達よりも聞こえる。
「……やけに騒がしいな」
そういいつつ呑気に顔をタオルで拭きつつまた欠伸をした。外の騒がしさの正体がなんなのかはわかりかねるが……
多分私はお荷物になるに違いない。
関わったら絶対ろくなことが無いだろう。
さて今日は何があっただろうかと思いながら彼女は身を整え始めた。
…
「ええと……今日はこの人達と11時に会談ね、あっこの企画書に返事をしないと」
化粧に髪型服装を整えた『名前』はしゃこしゃこと歯を磨きながらスケジュール帳と睨めっこをしていた。
最近少しずつではあるが来る企業の質が以前からハイレベルではあったもののほんの少し……上がっている。いや増えた。
これも私の所業が成したのならば嬉しいが、GOLDの2年前の世界なのだからこの未来を歩むのは決まっていたことなのだろう。
絶対的確信のある企業……そんな会社に現世で務めれたら良かったのになぁ。
……なんて今じゃどうしようもないけれど。