第6章 絡み合い
そして、『名前』とカリーナはお茶の約束を交わしカリーナ部屋から出ていった。
彼女は明日も勿論ショーの歌姫として出演する。テゾーロとともに歌うのだ。
「これを毎日なんだからカリーナも楽じゃないだろなぁ」
今の私は数倍楽で恵まれているのかもしれない、と思ってしまう。確かにこの環境はテゾーロの"お気に入り"だと思われても仕方がない。
__断じて違うけど!
「お気に入りだなんて……テゾーロが認めたとしても絶対私は認めないっての」
彼に一途にステラを思う心があり続ける限りそんなものは知らない人達の羨望の成れの果てでしかない。
そんな虚しいものになるなんて絶対嫌だ。
というか、彼にはステラ以外ありえないから当然のこと。
本当、そう考えると知らない人って悲しいことやってるんだなぁ
「……あれ?」
そこまで考えた私はふと疑問が浮かんだ。
じゃあ私はそれを知っていて理解した上で何故テゾーロの言葉を真に受けて、真面目に返したんだろう?
「もしかして……それに」
そういえば、さっきでてきた涙はなんだったんだろう?
「……」
ふと考え込んでいるとさっきカリーナと喋る前にしておいたお風呂の用意を思い出した。
「どうでもいいや、お風呂はいって寝ちゃおう」
一瞬過ぎた なにか を私は知らないふりをして、バスルームへと向かった。
…
「なんで教えちゃうのよ!」
「あれはつい……」
一方、『名前』をあとにしたカリーナは行きつけのWILDCOWに訪れていた。
彼女の声が大きくてもうもる声、それを拾ったダブルダウンは苦笑いをしている
ため息をつきながら彼女は1口ステーキを口に放り込んだ。
「折角何かを探れると思ったのに、どうして__
私が『名前』を尾行していたこと言っちゃったの?!」
「あれはいつまでも気づかない『名前』が気の毒で……」
ダブルダウンは依然目を逸らしながら言い訳をしていた。
そしてカリーナも同じく呼応するように頬を膨らませている。
「はぁ……あの子ただでさえ秘密が多いんだもの、怖くてたまらないわ」
「?どこが怖いんだよ」
「だって突然現れたのよ?素性不明で!……監視者かもって」
「……」
ダブルダブルはぽかんとしたかと思えばすぐさま吹き出した。
「ぶはっ」
「何笑ってんのよ!こっちは大真面目よ?」