第6章 絡み合い
「女狐?私の本性しっかり調べてるのね、なんで知れてるのかしら」
「いやその」
「今度はアナタの番」
ついつい漏れてしまった言葉を濁すが彼女の疑いの目は消えない。彼女の敵になるつもりはないのだけれど。
あぁもう、いいや
「……私は能力者でもない、人をねじ伏せる力もないただの人間です。それ以上でもそれ以下でもない」
「?」
「期待していた反応じゃないかもしれませんが……」
ふと微笑む彼女の目がカリーナ自身を見透かすように輝いた
その輝きに少し狼狽えると、『名前』はにこりと微笑み、
「それでも私と、よろしくしてくださいね」
「!」
ひとつも先程までの焦りを見せずに冷静に返してみせた。
カリーナは呆然としながら添えていた手を戻し、すとんとソファに座る
……その瞳から感じた脅威に負けたのだ
一転攻勢
『名前』は特別何かをしたわけじゃないのに私はそう自覚させられた
何が それ以上でもそれ以下でもない よ。バッチリあるじゃない。わからない、理解できない、何がそうさせているのかわからない。
少なくともただの人間じゃない!
「負けた」
ふ、と自虐的に嘲笑しながらカリーナは呟いた
その呟きに理解できない当の本人『名前』は首を傾げた
「どうかされましたか?」
「あー……よくわからないけど本気の目ね。怖くて脅したけど実力を感じたわ」
「脅す?」
「そうよ、私を探る監視者かと思ったの」
だって、と彼女は足をくみ
「経歴不明、突然の幹部、テゾーロのお気に入り……ってなれば何か裏があるかもって思っちゃうじゃない」
真面目な顔でそう言った。それを聞いて笑顔で『名前』は
『それな!』
と思う他なかったがこの気持ちはどうしようもないのでなんとか押し込めた。カリーナは続けて
「アナタの探り通り……通称女狐の私はこの船のテゾーロマネー目的で来たのよ」
「……察しはついてました」
苦笑いをしながら頷くと彼女は まぁ、といつも通りの表情に戻った
「まっ元からあなたには打ち明けるつもりだったけどね」
「?なんで」
ニッコリ笑ってカリーナは手を出してきた
「友達になりたかったの、アナタとね」
「?!」
驚いて今度は私が音を立ててカップを置き珈琲をこぼしそうになった。
いや、友達?……さっきから急展開にも程があるでしょ!