第2章 グラン・テゾーロ
……そうして船の上で数ヶ月が経った
天竜人にどんな形であったとしても好かれる為に、悦ばれるためには何だってやり遂げた
持ち前の社畜生活で養った不条理に対する対応と、自身の余りの不運さで得た経験を生かし、天竜人の気の赴くままに働いた。
……時には、彼らの慰みものとして働いたことだってある。
そうして、私は天竜人にとってお気に入りの奴隷として地位を高めた。
「さあ来るだえ!『名前』!」
「はい、仰せのままに」
前までは牢屋に入れられたらそれきり少ない食料でただただ死なないように生きていたり、呼ばれれば痛めつけられるのみだった。
今ではほぼ常に天竜人の横を歩いている。
「ふぇっふぇっふぇ……『名前』は本当美しいだえ!わちしのペットにピッタリだえ!」
服装もボロきれのみの服とは言えないものだったのが、気に入られたおかげで高価なものを着せてもらえるようになった。
「貴殿の横を歩けること、光栄です。この奴隷どもにそのような対応大変感謝します。」
「いいだえいいだえ!今日もわちしの横から離れないように!」
船内を天竜人とともに歩くとすれ違う貴族に振り向かれるほど『名前』は奴隷には見えない姿になっていた。
「はい、仰せのままに」
たが、父上が天竜人が奴隷とともに一夜を過ごしたり
高価な服を同じように着せたりするなどは如何なものか。
と最初は反対していたが、スネかじりのクソ息子の説得と私の立ち回りにより指摘することを辞めた
そんな立ち位置でも常に謙遜し、あくまでも私は奴隷だと言い続けると貴族も私に対し優しく対応してくれるようになった。
「あら『名前』さん、今日もお美しいですこと」
「これも主のおかげです。」
「そうですわね!流石は天竜人……チャルロス様は偉大です」
連日行われる船内でのパーティでも私は参加することを咎められはしなかった。
主こと天竜人が私を参加させているのだからそらそうだけど。
でも普通じゃこんな食事も頂けないはず
勿論手首の手錠も外され今では首輪、それも豪華に彩られた普通の奴隷じゃ滅多にない特注の首輪のみだった
「チャルロス様……!」
「今日も本当神々しい」
「連れておられる方も流石お綺麗です」
「そうかえそうかえ!『名前』はわちしのペット……当たり前だえ」
「チャルロス様口元が汚れております」