第6章 絡み合い
そして徐々にではあるが手下が功績をあげる件数が増えた。
相応の報酬としっかりとした説明を『名前』が行ってから手下のやる気か目に見えて上がっている。
業務面だけではなく、船内でバカラやカリーナのファンクラブが密かにあることをしっていたが、最近『名前』のファンクラブも出来ているらしい。
あいつが来てまだ数ヶ月、それなのにここまで人を動かすとは思わなかった。
天竜人を"奴隷"の立場から操っていた時から才能はあっただろうが、一つ謎はある。
__何故、そんな彼女が記憶を失う上、道端に倒れていた?
どう考えても常人にできる所業じゃない。
"普通"に生きている分には十分すぎる力を持っていながら何が彼女をそこまで陥れさせた?
記憶を消さなければいけないほど何かに関わったか巻き込まれたか……
「__テゾーロ様?」
「!」
ハッとし我に返るとタナカが困り顔でこちらを覗き込んでいた。
どうやら私は考え事に夢中になりすぎて自室前に立ち止まったきり動かなくなっていたらしい。
「どうされましたか?体調でも優れない__」
「っいや、いいんだ。少し気になることがあってな……」
「そうでしたか、もし時間があるようでしたら睡眠をとっては?」
ニコニコ顔のタナカに言われ流されるようにテゾーロは頷いた。
「あぁそうする。じゃあ」
「はい、おやすみなさいませ」
そういってタナカは地に吸い込まれていった。
そんな彼を見届けたテゾーロは暫く床を見つめてから自室に戻った。
…
「___はっ!」
その声とともに飛び起きた『名前』は辺りを見回す。
どうやらあの後ソファの上で寝てしまっていたようだ。
「ね、寝ちゃってた……今何時?って気にしなくてもいいのか」
特に仕事もないし来客もいない。
そもそも来客といってもテゾーロしかこないしテゾーロの前で寝るわけがない。
「んん……目覚め悪、お風呂にでも入ろうかな」
ため息混じりにリモコンを取ろうとした時、『名前』の部屋に扉のノック音が響いた。
「!」
扉に目をやるが開く気配はない。
先程帰ったばかりのテゾーロのわけもないし、もしそうだったら問答無用で開けてくるから違う。
……誰?
この階層はタナカさんが許可しないと入れないはずだから面識はあると思う。でも来客なんて珍しい。というより初めてだ。