第6章 絡み合い
「そんなの、ずるい……です」
「!」
赤らめながらそう言った『名前』によってテゾーロの欲がますます駆り立てられる。
す、と『名前』に手を絡めるとぎこちなくも握り返された。
この感情を抱くことに違和感しかないが率直に言うならば
……愛おしい
戸惑いながらもされるがままの彼女を見つめ続けていたら視線に気づいたのかこちらに目を向け、ムッとする
「そうやって何人落としてきたんですか」
「強いて言うなら私は何もしていない」
そう言うと更に『名前』は目を細める
「なんだその顔は」
「わかってるくせに」
「……はは」
それに関しては反論はできない。
あんな行為の最中を見られてしまったテゾーロは
口だけは達者になるしか自分のプライドを守る術は無かった
「それにしても……随分と利口じゃあないか」
「断ったら何されるかわかりませんもん」
「ほう」
視線を『名前』の足に向け彼女の顔へゆっくりと戻していく
視線を向き直す前とは違いその顔は歪んでいた
「っ……!」
心底ドン引きしたと言いたげな顔だ
「ん?」
彼女の言葉に対しとぼけて返すと更に彼女はムッとし
「なんですかその目、嫌な予感しかしないんですけれど」
「なら示してやろうか」
途端に青ざめて断る『名前』の行動はもう手遅れだった
「いえ、結構で__っ?!」
ちゅ、と開いた口に重ねると呆気なく黙る『名前』。
突然のキスに戸惑うのが吐息からよく伝わる。
「!〜っ……んっ……」
「(こんなに素直なのに目は反抗的だな)」
更にしてやろうかと肩に手を置くと即座に手首を掴まれた
「〜っいい加減にして下さい!」
「!」
掴んでそのまま押し飛ばす
……といっても体格差的に力の抜けた彼がほんの僅かによろめいただけだが。
きっと睨む彼女の目が潤んでいる。
「人で遊ぶのもいい加減にしろ!」
「………」
「ド変態!」
「っ__」
息を荒らげ顔を赤らめる彼女に何かが脈打った。
直ぐに我に返り目の前の『名前』の言葉も虚しく全く違うことを考えていたテゾーロは悪びれもなく
「……やりすぎたな」
そう言って、『名前』から離れてテーブルから彼女に渡されるはずの資料をとり部屋を後にした。
一人残された『名前』は少し崩れた髪の毛に触れると、一粒だけ涙が落ちた