第6章 絡み合い
「___くくく、はははは!」
笑った。
「怖!?」
「くく、お前は思いもしないことばかりするな」
「……悪かったですね、いつも気が利かなくて」
面倒くさそうにそう言って『名前』は持ってきたうちのひとつのカップをとり啜った。
「全く、読めないな」
「いや、貴方よりは。そんなことないと思うんですけど……」
「……曖昧に求めるよりはマシだ」
珈琲をまだ飲んでないのに苦そうな笑みを彼は浮かべた。そして彼は続けて珈琲に口をつける。
「1つ質問しよう」
「はい?」
「お前は誰かを愛したことはあるか?」
「……」
考えながら手に持ったままの黒い水溜まりに目を向けた。暗闇に映る自分、苦い残り香が口元を漂う。そう言われてみると、あまり恋愛に関心は抱かなかったな。高校時代も大学……大人になっても私は特に誰かに恋心も寄せなかったし思われていたならば、一度も気づけなかった。子供が欲しいとも誰かに愛され愛したいとも思えなかった。『無関心で冷たい、誰かを愛せない人間』……妄想かもしれないけれどそう頭の片隅で、ずっといた誰かが言っている気がしている。なんてグダグダと考えながら、一息ついた。
「……ないですね、貴方とは対称的に」
「どういう意味だ」
「そのままの意味です」
テゾーロガールズ、さっきの行為と……何よりステラという名の心から愛した人。あたしはそのどれも持ち合わせていない。すまし顔で珈琲を飲む彼女をみてテゾーロはつまらなそうな顔をした
「チッ……まぁいい。」
「ま、私と違って経験豊富ですもんね?"テゾーロ様"」
いつもは使わない呼び方に彼は思わず ウッ と気持ち悪そうにした
「やめろその呼び方は」
「ええ?いや少なくとも、ここにいる人ほとんどは皆そう読んでいるじゃないですか」
「……お前がすると悪寒が走る」
「なっ」
なんて失礼な!と彼を見やったが、心底嫌そうな顔で見てくるのでほんの少しだけ心が傷んだ。何故だ、この納得のいかない罪悪感は。
「まあ話を戻して……単刀直入に聞いてしまいますけれど、さっきの人は所謂セフレと?」
「いやこれっきりだ」
「ほう?じゃあお得意のナンパでもしたんですかね」
「!?」
ガタッとわかりやすく焦る彼の反応に少し驚きつつ、そしてニヤけた
「ふふ、どうされたのです。そんな動揺して」