第7章 マワレマワレ*白澤*
しばらく歩くと、アルコールの匂いが鼻を掠めた。
アルコールの匂いの正体は、呑兵衛が1度は夢見る滝、養老の滝である。
1度白澤様に月が綺麗だからと、連れてきてもらったことがある。
その時は私と、桃太郎さんと、白澤様の3人で呑んで、酔いつぶれてしまった白澤様を桃太郎さんと一緒に店まで運んだ記憶がある。
その記憶でさえ、数日前まで忘れていたものだが
いまは走馬灯のように蘇る。
水のように流れるその酒の滝の上には丸い満月が浮いていて
まるで吸い込まれるかのように私は月を見つめた。
「もういちど、この場所に貴方と2人で来たかった・・」
独り言をぼそっと呟く。
日付が変わるまで、あと5分。
あと、5分たつと私は転生する。
「転生なんて・・・・・したくない・・・・・!!」
今までこらえていた涙が一気に溢れだす。
どうしようもなく涙が出て
せっかく着たお気に入りの着物は涙でぐしゃぐしゃになってしまった。
すると、後ろからいきなり声がした。
「月が綺麗ですね。」