第5章 金魚草のない花屋❇︎鬼灯❇︎
「はい。キンギョソウです。」
私の一番好きな赤色のキンギョソウを鬼灯様に見せると
彼は不思議そうな顔をした。
「これ・・・・金魚草ですか?」
「え・・・・はい。そうですけど・・・?」
レースのような花びらがたくさん集まっている可愛らしいその花は、金魚に似ていることから『キンギョソウ』と呼ばれている。
私が生前、現世でよく見た形である。
「・・・・・私。この形見たことないです・・・・」
「はい?」
「この金魚草ってどんな鳴き声なんですか?」
「鳴き声!?・・・・いや、普通の花ですし・・・・鳴かないですよ?」
「え?」
「え?」
二人して頭の上にはてなマークを浮かべる。
なぜ話がかみ合っていないのか・・・・・?
「えっと・・・・。この花はどこから仕入れたんですか?」
「現世の生花市場ですけど・・・・・?」
「現世・・・・・?」
そう。地獄の生花市場にはキンギョソウは置いてなかったのである。
しばらく考えてから、鬼灯様はひらめいたような顔をした。
「なるほど。わかりました。」
「え?え?」
「『きんぎょそう』違いだったんですね」
「はい?」
なるほどなるほど。と納得したような様子の鬼灯様。
・・・・・意味がわからない?
「あの・・・・・結局どういう・・・?」
「あぁ。気にしないでください。・・・・その赤いキンギョソウいただきます。」
「あ、ありがとうございます・・・?」
呆気にとられている私を横目に、彼はほかの花を見に行った。
・・・・・あ!そうだ!!
「あの!鬼灯さ・・・」
思いっきり後ろを振り返るとまた私の前に黒い物体が現れた。
・・・・・あれ?デジャヴ・・・・・。
「・・・・・貴女は私にタックルするのが好きなんですか?」
恐る恐る上を向くと、呆れ顔の鬼灯様が・・・・・
「す、すみませんでしたぁぁぁぁあ!!」
あ・・・・・今度こそ終わった\(^q^)/
「まぁ、別にいいですけど・・・・・」
「あの!この間もほんとにすみませんでした。閻魔大王様の補佐官様だって気づかなくて無礼なことを・・・・!」
あ、やばい。頭の中真っ白だ。
自分でも何話してんのかわかんない。
私が必死で謝っていると、鬼灯様は急に笑いだした。