第5章 金魚草のない花屋❇︎鬼灯❇︎
お香さんが帰ったあと、仕事は失敗続きだった。
バケツに足をひっかけて水をまき散らすわ
配達先を間違えるわ・・・・・
「散々だ・・・・・・・・・・」
なんだか調子がよくないので今日は早めに店を閉めようと思い、店の外に出してある花をしまう。
結局・・・・・今日も来なかったなぁ。
「はぁ・・・・・」
夕暮れの空は綺麗なオレンジ色に染まり
反対側からはお月様が少しだけ顔をだしている。
少しだけこの景色を見ていたくて、作業をする手を止める。
「綺麗だなぁ・・・・・」
よしっ!
と気合いを入れて作業に戻ろうと思い後ろを振り返る。と
なんか、向こう側からめっちゃダッシュしてる人影が・・
・・・・・あれ!?こっちに来る!!??
少しだけ恐怖を覚えたは、急いで店の中へ避難する。
が、それは誰かの手によって遮られた。
「ほ、鬼灯様・・・・・!?」
「ハァ・・・ハァ・・・まだ・・・お店開いてますか・・・・・?」
なんと。全力ダッシュでこちらへ向かっていた人物はがすごく待ち焦がれていた(?)鬼灯であった。
「お香さんから・・・あなたのお店に金魚草が入ったと聞いて・・・・ダッシュで来ました」
話しながらも苦しそうに息切れをする鬼灯様に、そんなに急いで来てくれたのかと思うと少し嬉しくなった。
それがキンギョソウの為なのか、私のためなのかはわからないけど、どちらにせよ彼に会えたことがこの上なく嬉しかった。
「あ、そ、そうです!キンギョソウ!入ってますよ!」
どうぞどうぞと店の中へ案内する。
さっきまでさみしそうにしていたキンギョソウは今は早く鬼灯様の所へ行きたくてしょうがないというふうにキラキラとその色を一層綺麗に見せていた。
(ような気がした。)