第5章 金魚草のない花屋❇︎鬼灯❇︎
綺麗な男の人はお店の中をぐるぐる回っている。
・・・・・なにか探してるのかな?
?「あの。すみません」
急にさっきのバリトンボイスが私を呼び止めた。
「は、はい。なんでしょう」
「金魚草っておいてありますか?」
キンギョソウ・・・・・?
「ごめんなさい。うちにはおいてないですね・・・」
「そうですか・・・・・。」
さっきから顔に仮面をつけたように全く表情が動かなかった彼が、少し残念そうな顔をした。
(キンギョソウ好きなのかな・・・・・?)
「・・・・キンギョソウお好きなんですか?」
「えぇ。まぁ・・・趣味というか・・・・」
キンギョソウ集める趣味・・・・?
変わってるなぁ
なぜかはわからないけど、少し、この人のお手伝いをしたいと思った。
「よろしければキンギョソウ入荷しましょうか?」
「ほんとですか!?」
私がそういうと残念そうな顔からとてもキラキラした目に変わった。
「はい。私もキンギョソウは大好きなので。いい色揃えておきますね。」
「ありがとうございます。・・・では、私はこれで、お邪魔しました。」
「はい。ありがとうございました。」
・・・・・・・・・・あ。
「すみません!お客様!お名前は・・・」
「あぁ。申し遅れました。私。鬼灯と申します。」
「鬼灯・・・さん。」
「また来ますね。」
そういって彼は軽く会釈をすると私に背中を向け去っていった。
私は彼の背中についている紅い鬼灯模様をただただ見つめていた。