第1章 ここ……どこ
でも触って見た感じお肌はシワシワになってはなさそうだったし、腰が痛かったりする訳でもない。
さっきまで気が付かなかった髪色に気づかせてくれた月光が迷路のような路地裏を照らしていた。
「……おい」
「ッ!」
比喩抜きで飛び上がった。
急に背後から聞こえた低い声。
暗い路地裏で気配もなく後ろから声がしたら誰でも驚くと思う。
だから高校生にもなって小刻みに震えながら恐る恐る振り返って、見えた人影に声も挙げられずにへたりこむのだって普通だ。
その顔にたくさんの継ぎ接ぎがあったら尚更。
だから私は情けなくなんてない……多分、おそらく、きっと
「見ねぇ顔だな。お前、さっきから何してんだ」
片眉を上げながら見下ろしてそう言った男。
どう考えても初対面の筈なのに、何故かその容姿、声に既視感を感じた。