第4章 歌
そんなガキ――――夢歌は、個性を知らないだけあって自分の個性ももちろん知らず、使ってるような素振りもなかった。
最近は俺も“無個性”なんじゃないかと思い始めた。
何かしら個性があんなら使いようもあるかもしれないがもし本当に何も無いなら、流石に気まぐれで拾ったこいつをずっと手元に置いとくのも無理がある。
まず、何も出来ないただ守られるだけの荷物連れてヴィランなんてやってられないし。
夢歌もそれがわかってんだろう、ここ最近少し焦ったような顔をする時がある。
こいつもこいつで俺に恩は感じてるみてェだけど
もしこのまま一緒に暮らして、これ以上情が移ったら――――
そんなことを考え始めてた頃だ。
いつものように帰ってくればやけに上機嫌の夢歌。
聞けば“友達ができた”と。
それも表社会の。
こいつ自分が今どういう立場なのかわかってんだろうな。
んで、個性の話になった時にもう一度確認の意を込めて個性の有無を聞いてみれば、不安そうに眉を下げてそれを否定した。
それならもうそろそろ手放さないと、と思った。
ちょっとした非日常的なのが味わえたと思えばいい。
ヒーローに引き渡すのは俺が危険だし、もう関係もなくなるならその辺に放り出しても……寧ろこの手で、なんて
心の片隅にある名残惜しさを意図的に見て見ぬふりをして。
そんなことを考えてたら
「―――――――――」
あいつが、歌ったんだよ。
髪の色を黄緑色に染めて。