第4章 歌
「お前、本当に個性ねぇのか?」
ちょっと考える素振りを見せたと思ったら今更な質問をされた。
それね、私も考えた。
トリップしてから容姿も変わったし、もしかしたら個性も発現してるんじゃないかって。
手からなにか出す感じでイメージしてみたり、ちょっと体に力込めてみたり、なにか特殊な感じの器官が増えてないか探してみたり。
でも何も無かったからそういう事なのかなって。
特殊能力的なの憧れてたから残念だけど……
「少なくとも今まで個性っぽい現象が起こったことはない……です」
正直に言うも、荼毘さんは特に残念な様子も見せずにただ“そうか”とだけ呟いた。
……
……もしかして私、個性持ってることを期待されてたんじゃないだろうか。
今の質問にそういう思いが込められてなかったとしても勝手にそう思ってしまった。
ただでさえ今の状態に荼毘さんへのメリットがあるなんて思えなくて、それに加えて個性も使えない私はお荷物以外の何物でもない。
ただ荼毘さんの気まぐれでこうして衣食住が確保されてるけど、それは逆に彼の気が変われば簡単に捨てられる可能性も無きにしも非ずってことで。
でもそれを抜きにしても、良くしてくれてる荼毘さんになにか恩返しがしたいと思ってるのだ。