第2章 荼毘
渡された服は、失礼だけど思ったよりかなりセンスがいい(気にしないだけで自分のセンスは良いと自負してます)。
なんで女物の服のセンスがいいの。
ってそうじゃない。
これは普通に考えて私用の服……だけど、まさか昨日拾った女に服まで買ってくれるなんて思えなくて、困惑した視線を向けてしまった。
「流石にどこのか分かんねぇその制服だけじゃ困んだろ。替え無しで生活する気か?」
「それは、そうなんですけど……でも流石にそこまでしてもらう訳には」
正論に食い下がると、“はぁ”とため息をつかれた。
「お前を拾ったのは誰だ?」
「……荼毘さん、です」
「ならお前に何をやろうが俺の勝手だよな」
「そ…………ありがとう、ございます」
また食い下がろうとしたら睨まれて、声は出る前に消えた。
代わりに出てきたのはお礼の言葉。
荼毘さんってヴィランなのに……優しい、よね。
ヴィランだったよね?
何だか、ちょっと年の離れたお兄ちゃんみたいな感じだ。
兄弟は妹しかいなかったからわかんないけど。
服をこれでもかと押し付けてから試着室へと背中を押す荼毘さんに、自然と笑みが零れた。