第2章 高級寮
「普通の生徒って・・俺たちは特別だぜ?
なんせ、教頭先生直々の選抜で来たんだからな!」
こんな見え見えの嘘、通じるかわからないが、俺はとっさに言ってしまった
それ以外の嘘が、思いつかないからだ
本当の事を言えば、馬はどこかの生徒、教師にばらしてしまう
だから、嘘をついて高級寮に侵入するしかない
「私ら、誰にも話しませんよ」
「そうですわ。
ですから、私たちが運転しているだけでも楽しい表情をみせてくれませんの?」
「僕たち、生徒さんが馬車から見える風景を楽しく見ていただけるのが、一番の喜びなんです!」
数体の馬が、俺とクラトスにむかって話してくる
その馬の言葉に乗せられそうになった俺は、つい本当の事を口に出してしまいそうになった
「俺たちは」
「俺たちはさきも言ったように、教頭の選抜で来た者たちだ。
決して、嘘はついていない。」
クラトスは俺を少し睨んで、話を遮るかのように言った
「そうかい・・だったらいいんだがね。」
「でも、なにか悩み事でもあるんじゃないの?」
「そう、見えるのは俺がデリックとの付き合いがまだ短いからだ。
・・わるかったな、あんた達の運転は最高なものだったし、景色もすばらしかった。
また、利用したいと思っている。」
クラトスは心配そうにこちらを見る馬たちに微笑んで答えた
そのクラトスを見て、馬は満足そうに笑い、俺たちを寮の前に降ろしてくれた
「・・・・。」
馬車が帰っていったのを見送ったクラトスは黙って俺を見た
「・・悪かった。
つい本音を言いそうになった。」
「・・優しいんだな。」