第2章 2
「どうして……川島……なんで」
「なにがですか?お嬢様」
相変わらず肝心なところを避けて撫でつづけている。
絶対に撫でるのをやめない。
次に進んで欲しい。
お嬢様は理性が飛んだ頭で口を開いた。
「なんで、触ってくれな……」
川島の目が一瞬、鈍く光った。
目の奥の熱が増して潤んだように見えた。
それなのに整った顔をピクリとも崩さず、教師然とした口調で川島がいう。
「お嬢様、もっと具体的にいってください。でないとずっとこのままですよ。朝になっても……」
冷静そうな態度の内側で、実は自分を追い詰めて興奮している川島の姿を、お嬢様は垣間みた気がした。
焦れったいのに気持ちがよすぎて、目じりに涙が溜まっていく。
「だって。なんていえば……」
眉根を寄せ、唇に手の甲を押し当てていった。
切なげに恥じらうような仕草。
それを見た川島が固まった。
口を半開きにしながら、お嬢様の顔を凝視している。
ハッと小さく息をはいたかと思ったら、目を瞬かせて頭を軽く振った。
「川島……?」
川島がお嬢様の両手首を捕まえる。
真顔でお嬢様の潤んだ瞳を見つめる。
端正な顔に目の奥だけが異様な熱を帯びていた。
「お嬢様の口からオレを求める言葉が聞けるまで、これ以上はなにもしません。ちゃんとどうして欲しいかいってください。でないと朝までこのままですよ」
お嬢様は戸惑いながら、その目の奥を見つめた。
いつもの川島なら、なにもいわなくても望みを察して動いてくれるのに。
やっぱり怒っているんだ。
自分を苛めて愉しんでいるとしか思えない。
もう、どうでもよくなってきた。
継続的に与えられる鈍い快感に晒されつづけ、頭がうまく働かない。
川島の強い視線を受け止めながら口を開いた。