第4章 日常
試験1週間前。
智と雅紀の部活も休みに入り、今日から約束通りみんなで勉強することになった。
「今日はどこにする?」
「人数いるからカフェスペースがいいかな」
荷物をまとめながら翔とニノが相談してる。
カフェスペースっていうのは、自動販売機とテーブルと椅子があるだけのフリースペースのこと。
そうだよな、5人だから図書館や自習室は難しいよな···どうしたってうるさくなるだろうし。
「カフェスペースでいいんじゃない」
なんて話してたら
「お待たせー」
雅紀がやって来た。
「翔くん今日からよろしくお願いします」
翔にペコリと頭を下げる。
「俺、勉強苦手だから本当に頼りにしてます!」
「俺も」
智も一緒になって頭を下げる。
「あはは、そんなに畏まらないでよ」
翔は笑ってるけど、勉強苦手って···
うちの学校、高校から入るのかなり大変なはずだぞ?
「よくうちに入れたな」
思わず純粋な感想が口からこぼれてしまった。
智と雅紀が目を見合わすのを見て失言に気付く。
やべ···
バカにしたつもりはないけど、そんなこと言われて良い気はしないよな。
「や、ごめん!嫌味とかじゃなくてさ···」
焦って謝った俺に、2人はニコッと笑った。
「気にしないでいいよ」
「受験は死ぬ気で勉強したよね」
「あんなに頑張ったの初めてだよね」
「合格出来たの奇跡だって、先生たち言ってたもんね」
「ねー」
雅紀と智は気分を害した様子もなくのほほんとしている。
2人とも心が広い。
「2人とも苦手だって思い込んでただけなんじゃない?うちに入れたんだから、自信持って大丈夫だよ」
翔が安心させるように言うと
「翔ちゃん教え方上手いの!すっごいすっごい分かりやすいんだよ!」
ニノは目をキラキラさせて力説する。
「だから大丈夫だよ」
確かに翔は教えるのが上手い。
下手な教師よりよっぽど分かりやすい。
「よし、とりあえず移動しようぜ」