第4章 日常
ーMsideー
帰ろうと下駄箱で靴を履き替えてる時に、今日までに返さなきゃいけない本があることを思い出した。
あぶね!
気付いて良かった~と思いながら、もう一度上履きを履いて図書館へ向かう。
無事に返却したところで、そういえば今日も翔たちは図書館で勉強するって言ってたなと思い出した。
約束の時間までまだ余裕あるし、ちょっと様子見てくか。
キョロキョロ探していると
いたいた!
窓際の席に仲良く並んでるのを見つけた。
近付いていくと、翔がニノの前髪を触ってるのが見えた。
あいつら、こんなとこでまで何やってんだ。
思わず呆れて足が止まる。
どうやら前髪をとめようとしているらしい。
翔がぎこちない手つきで頑張っている。
何とかとめられた翔がにっこり笑うと、ニノが照れたようにはにかんだ。
「ありがと、翔ちゃん。髪伸びてきちゃったから、試験終わったら切りにいこうと思ってたんだ」
「じゃあ切るまでこれ貸すよ」
「妹さんのでしょ?なくしちゃったら困るから翔ちゃんが持ってて?」
「じゃあ毎日俺がつけてあげる」
そんな甘々な会話が聞こえてくる。
2人で顔を寄せ合ってニコニコして。
ずいぶん可愛いピンだと思ったら舞ちゃんのか。
翔のやつわざわざ借りて来たんだな。
舞ちゃんに何て言ったのやら···
それにしても相変わらずの2人の世界。
中学生たちが目を真ん丸にして2人を見ているのにも、小声の会話が聞こえてしまうくらい近くにいる俺にも、全く気付かない。
若干うんざりした気持ちになった俺は、2人に声を掛けるのをやめて図書館を後にした。
今週予定のない日もあったけど、一緒に勉強するのはやめておこう。
あの空気の中に1人でいるのは絶対しんどい。
来週、智と雅紀も一緒に勉強出来るのを待とう。