第4章 日常
今日も放課後は翔ちゃんと図書館へ。
昨日と同じ窓際のカウンター席が空いてたから、そこに座る。
席に着くなり、翔ちゃんは何やら鞄をゴソゴソしだした。
探し物かな?
勉強道具を用意しながら横目で見ていたら、翔ちゃんは無事見つけたらしい何かを取り出す。
その手がおもむろに俺の前髪に触れた。
な、な、何?何!?
油断していた俺は、翔ちゃんの突然の無言の行動に動揺してしまう。
翔ちゃんはたまに俺に触れてくる。
男同士だからさ、気にすることじゃないって分かるよ。
翔ちゃんは何とも思ってないってことも。
智や雅紀だって同じようなことしたりするし。
でもさ、翔ちゃんを好きな俺にとってはやっぱりいきなりだと心臓に悪いんだよ。
そりゃね、翔ちゃんに触ってもらえるのは嬉しいんだけどね。
翔ちゃんはそのまま少しぎこちない手つきで、俺の前髪を流す。
何だか分からないけど、撫でられてるみたいで気持ちいいな···
こっそり翔ちゃんの手の感触を楽しんでいたけど、その手はすぐに離れていった。
翔ちゃんは俺を見るとにっこり微笑む。
何?
そっと前髪に触れてみると何かついていた。
···ヘアピン?
「昨日前髪邪魔そうにしてたから···妹に借りてきたんだ」
少し照れたような翔ちゃん。
俺のこと気に掛けて、わざわざ妹さんに借りてきてくれたの?
胸がキュンとする。
「ありがと、翔ちゃん」
目の前の窓を見ると、ハート付きの可愛いピンをつけてはにかむ自分の顔が映っていた。
俺がつけるには可愛すぎるけど。
似合わなくたっていいんだ。
翔ちゃんが俺のために用意してくれたんだもん。
その気持ちがすごく嬉しい。