第4章 日常
ーNsideー
勉強なんて好きじゃない。
だってめんどくさいし。
将来なんかの役に立つの?って思うようなのが多いし。
成績は悪くはない方だと思うけど、それなりにやってそれなりの点数が取れてればいいやって思ってた。
今までは。
さすがに受験は真面目に頑張ったけどね。
でも今日翔ちゃんと一緒に勉強して、すごく楽しかったんだ。
勉強が楽しいなんて初めて思った。
正確には“翔ちゃんといっしょにやる勉強”が楽しかったんだけど。
隣に並んで、分からないことは優しく教えてくれて。
ふいに、耳元で囁くように喋る翔ちゃんの声を思い出して顔がカーッと熱くなる。
低くて優しい声。
俺の大好きな声。
翔ちゃんの息が耳に掛かるたびに、ドキドキして心臓が壊れそうだった。
俺、赤くなってなかったかな?
ドキドキしてたのバレなかったかな?
少しでも長く翔ちゃんの側にいるためには、この気持ちは隠しておかなきゃいけない。
翔ちゃんに不快な思いさせたくないもん。
それにさ、翔ちゃん優しいからないとは思う···思うけど、万が一俺の気持ちがバレて「キモッ」とか言われたら?
俺、立ち直れないよ···
だからね、絶対バレないように気を付けないと。
宿題を終わらせた後、今度は今日翔ちゃんに教えてもらったところを開く。
ちゃんと復習しておかなくちゃ。
翔ちゃんの説明はすごく分かりやすくて頭にスルスル入ってきた。
先生より分かりやすかったな。
せっかく翔ちゃんが教えてくれてるんだもん。
ガッカリさせたくない。
翔ちゃんに対して恥ずかしくない自分になりたい。
翔ちゃんのためって思えば勉強も全然苦じゃないんだから···むしろ楽しいって思えちゃうんだから。
恋のパワーって本当にすごい。