第4章 日常
試験が近付いたからか、図書館の中は結構人が多かった。
窓際のカウンター席に並んで座ると
「今日は何やる?」
カズが俺の耳元に口を寄せて小さな声で聞いてくる。
大きな声を出せないからなんだけど、ドキッとした。
カズの顔が近い。
耳にカズの息がかかってこそばゆい。
「なんでもいいよ」
俺もカズの耳元に小さく囁く。
くすぐったかったのか、カズがくふふと小さく笑った。
こんな幸せなやり取りが出来るなんて···!
図書館にして良かった!
教科を決めて、とりあえずそれぞれ教科書を広げて勉強を始める。
真面目に取り組んでいるフリをしつつ、気付かれないように注意しながらそっとカズを見る。
真剣な表情で問題を解くカズの横顔は本当に綺麗で、思わず見惚れてしまう。
眉間にシワ寄ってる···と思ったら、やがて口元が小さく上がった。
問題が解けたのかな?
小さな表情の変化もまた可愛い···
·········いけないいけない!
いつの間にがっつり見つめてしまっていることに気付いて、無理やり視線を外す。
あんまり見てたらバレちゃうよ···
そう思いつつ、また横目でチラリと見てしまう。
少し長めの前髪が目にかかってる。
邪魔なのか時々かき上げる仕草にまた見入ってしまった。
いや、本当にちゃんと勉強しなきゃ。
カズに聞かれて答えられなかったらカッコ悪いもんな。
たまにチラッとカズを見てしまいつつ、俺もフリじゃなくて真面目に取り組んだ。
時々カズに質問されて、それに答えて。
耳元でコソコソ話すのが、まるで内緒話をしてるみたいで何だかくすぐったい。
幸せを噛み締めていたら、あっという間に閉館時間になってしまった。