第1章 恋に落ちる
天気の良い日は中庭で昼食を食べる。
ベンチもあるし、人が少ないのが良い。
外だと気持ちいいし。
「いただきまーす」
お気に入りのハンバーグサンドをかじる。
毎日食べてても、やっぱり美味しい。
「雅紀、クラスには慣れた?」
びっくりするくらい大きい弁当箱を気持ち良いスピードで空にしていく雅紀に、智が聞く。
「うん、大分ね」
唐揚げを飲み込みながら、雅紀は笑顔を見せた。
「友だちも出来たし。同じバスケ部のやつ」
入学式の日、自分だけ違うクラスだと分かった雅紀はそれはそれは盛大に落ち込んだ。
雅紀の性格なら大丈夫だと思ったけど、あまりにも凹んでたから心配してた。
ちょっとだけね。
言ってやらないけど。
「なら昼もそいつと食べればいいのに」
俺の口から出るのはこんな言葉ばかり。
それでも俺の性格をよく知っている雅紀は全く気にしない。
「俺はニノと智と食べたいの」
「えー、俺は智と二人だけでもいいよ」
「ニノ冷たい!俺にも優しくしてよ!」
いつものやり取りを智はニコニコして見てる。
「あれ?いつもと違うパンだ」
雅紀が智の手にしたパンを目敏く見つけた。
「これ?購買のおばちゃんにもらった」
智が半分ちぎって口に入れながら、残りを俺に渡してくれる。
モグモグ食べながら、うまいうまいと連発してるけど、智の味覚はあまりアテにならない。
何食べてもうまいって言うんだもん。
俺は我ながら偏食だと思う。
食べられないものが多いから冒険はしない。
まぁ、購買のパンはハズレがないから本当に美味しいんだろうけど。
「またオマケもらったの?可愛いと得だね」
雅紀がなんだか感心しているが
「可愛くねーし!」
俺は反射的に否定した。
「おばちゃんの優しさだろ。つか、男に可愛いって言うな」
「いやいや。2人とも本当に可愛いから」
雅紀はよく俺たちのことを可愛いと言う。
正直全く嬉しくない。
そりゃ智は可愛い顔してるけどさ。
「いや、本当に。クラスや部活のやつらも2人のこと可愛いって言ってるよ。俺2人と仲良いじゃん?羨ましがられてるんだぜ」
「はぁ?」
なんで他のクラスや部活のやつらが俺たちのこと知ってるの?
冗談にしか聞こえないが雅紀は真顔だ。
智も困ったような顔をしている。