第1章 恋に落ちる
昼休み
チャイムが鳴って先生が教室を出たら、すぐに智と購買に向かう。
うちの学校は学食もあるけど、焼きたてのパンが買える購買は人気でいつも混んでいる。
俺と智はこのパンがお気に入りで、毎日買いに行くのが習慣になっていた。
初めて購買に行った時は、あまりの混雑ぶりに怯んでしまって、気付いたら売り切れてしまってた。
まるで戦争のようなパン争奪戦に智と呆然としていたら、偶然そこにいたクラスメイトたちが何も買えなかった俺たちに気付いてパンを分けてくれた。
遠慮したけど、美味しいから食べてみてほしいと言ってくれて。
次はもっと早く買いに来た方がいいよと教えてくれた。
有り難くいただいたパンは、とっても美味しかった。
購買に着くと、今日はまだそんなに混んでなかった。
「こんにちは。今日もいつもの?」
智と2人で毎日通って。
しかも2人とも毎日同じものしか買わないでいたら、購買のおばちゃんが顔を覚えてくれた。
「うん。いつもの」
おばちゃんがいつものパンと一緒に頼んでないパンまで入れてくれる。
「オマケよ。2人で半分こしてね」
ニコッと笑って紙袋を渡してくれた。
「わぁ!ありがとう」
智がとびきりの笑顔でお礼を言う。
俺もペコリと頭を下げた。
おばちゃんはいつも優しくて、時々こうやってオマケをくれたり、授業の関係で行くのが遅くなった日とかこっそり取っておいてくれたりする。
受け取ったパンを抱えて購買を離れると、お弁当を持った雅紀が待ってた。
これも毎日のこと。
雅紀は隣のクラスだけど、昼はいつも3人で食べてる。
雅紀も同じ中学の友だち。
俺とは小学校も一緒で、なんと小学校中学校の9年間同じクラスだったという腐れ縁だ。
明るくて元気で友だちも多い雅紀。
俺とは真逆の性格なのに、なんでか気に入られて。
最初はうるさくてウザいと思ってた。
でもどんなに邪険にしても、変わらない笑顔で当たり前の顔して隣にいて。
俺をそのまま受け入れてくれる雅紀の側はすごく居心地が良いことに気が付いた。
中学時代は雅紀と智と3人で過ごした。
まさか高校まで同じだとは思わなかったのに、今も3人で一緒にいる。
口に出せないけど、本当はすごく嬉しいと思ってる。